
成人の喘息治療において、発作初期に吸入ステロイド量を増量すると重篤な発作を防げるか?
■ 昨日、「小児の」気管支喘息発作の治療において、発作初期に吸入ステロイド薬を5倍に増量しても、重篤な喘息発作までの期間を短縮しないことをご紹介しました。
■ では、「成人」ではどうでしょうか? NEJMの同じ号にその結果が発表されています。
McKeever T, et al. Quadrupling inhaled glucocorticoid dose to abort asthma exacerbations. New England Journal of Medicine 2018; 378(10):902-910.
成人喘息1922人に対し、喘息コントロールが増悪し始めた時期に吸入ステロイド薬の投与量を一時的に4倍にするという管理計画が、重篤な喘息発作を防ぐかどうかを12か月間検討した。
背景
■ 喘息増悪は患者にとって恐ろしいものであり、時折致死的である。
■ そこで、喘息コントロールが増悪し始めた時に吸入ステロイド薬の投与量を一時的に4倍にするという喘息管理計画(自己管理計画)が、成人や青年の重症の喘息増悪率を低下させるというコンセプトを検討した。
方法
■ 吸入ステロイド薬治療(追加治療の有無に関係なく)を受けており、過去12ヶ月間に少なくとも1回の悪化を経験している喘息のある成人と青年を対象とし、実用的で非盲検のランダム化比較試験を実施した。
■ 吸入ステロイド薬投与量を4倍に増やすことを含んだ自己管理計画群(4倍群)と、同じプランを用いて増加させない群(非4倍群)、を、12ヶ月間にわたり比較した。
■ プライマリアウトカムは、最初の重篤な喘息増悪までの期間とし、全身性ステロイド薬を使用する治療または喘息による予定外の医療機関受診として定義された。
結果
■ 1922人の参加者がランダム化され、そのうちの1871人が第一の分析に含まれた。
■ ランダム化された年に重症喘息増悪を経験した参加者数は、4倍群では420人(45%)、非4倍群で484人(52%)であり、最初の重篤な増悪の補正ハザード比は0.81(95%信頼区間 0.71-0.92; P = 0.002)だった。
■ 有害事象は、主に吸入ステロイド薬の局所効果に関連しており、非4倍群よりも4倍群で多かった。
結論
■ 喘息に罹患している成人と青年を対象とした本試験では、喘息コントロールの増悪初期に吸入ステロイド薬の用量を一時的に4倍にするという自己管理計画を行うと、用量を増量しない管理計画よりも喘息増悪が少なかった。
結局、何がわかった?
✅吸入ステロイド薬による治療を受けている成人喘息患者1922人を、発作初期に吸入ステロイド薬投与量を4倍増量群/増量しない群にランダム化して、12ヶ月間にわたり比較したところ、最初の重篤な増悪までの期間のリスクが19%低下した(補正ハザード比 0.81;95%信頼区間 0.71-0.92; P = 0.002)。
発作初期に吸入ステロイド薬を増量するという重篤な発作予防は、効果を期待しづらいようだ。
■ 同じ号に報告された小児喘息に対し吸入ステロイド薬を5倍に増量する方法は、「効果がないうえに、身長抑制さえ来す可能性がある」とまとめられていました。
■ そして、今回ご紹介した成人に関しては、「19%程度の重篤な発作予防になるが、局所的な副作用は増やすかもしれない」とまとめられます。
■ これらを受けて、やはりNEJMの同じ号に論評が掲載されています。
Escalating Inhaled Glucocorticoids to Prevent Asthma Exacerbations
■ その論評では、成人の報告はオープンラベル試験であり主要評価項目に影響したかもしれないこと、計画では重篤な発作率を30%低下することを有意としていたが19%であったこと、長時間作動性β刺激薬の併用治療が許可され約70%が維持療法として使用していたことなどが、結果に影響した可能性を指摘していました。
■ そして、高用量の吸入ステロイド薬による増悪予防戦略が有効であると確信させることは困難であると結んでいました。
■ 最近のJAMAに、いわゆるSMART療法に関するメタアナリシスが発表されており、小児(4~11歳)に関するエビデンスは限定されているものの、有効性を示しています。
■ 発作初期の治療としても、LABA併用の方が有用と言えるのかもしれません。
今日のまとめ!
✅成人喘息治療に関し、発作初期に吸入ステロイド薬を4倍に増やすと、重篤な発作を2割程度減らす可能性があるものの、局所的な副作用は増やすうえ、効果は期待するほどではないようだ。