DeMuri GP, et al. Dynamics of Bacterial Colonization With Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae, and Moraxella catarrhalis During Symptomatic and Asymptomatic Viral Upper Respiratory Tract Infection. Clin Infect Dis 2018; 66(7): 1045-53.
風邪を引いたときに、二次感染をする理由は?
■ 上気道炎(いわゆる風邪)に罹って、その経過中に二次感染を来して悪化することは良く経験されます。
■ その理由のひとつと言える報告と言えそうです。
4~7歳の、上気道感染中・感染徴候がない時期に、鼻咽頭の肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスの存在および密度を評価した。
背景
■ ウイルスは、小児の上気道感染(upper respiratory tract infections; URTI)の約80%で検出され、症状のない小児の30%の鼻咽頭でも検出される。
■ しかし、鼻咽頭の細菌密度やコロニー形成の動態に対する無症候性ウイルス感染の効果は報告されていない。
■ 本研究は、URTIに罹患中の4〜7歳の小児における鼻咽頭の肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスの存在および密度を評価するために実施された。
方法
■ 鼻検体は、サーベイランス期間中、無症候であるときに4回、また、URTIの症状があったときは毎回採取された。
■ そして、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて、呼吸器ウイルスおよび細菌性病原体を同定および定量した。
結果
■ サーベイランス期間中の症状のない期間より、急性上気道感染中の方が、3種類の細菌すべてにおいて定着している児の割合は高かった。
■ ウイルスが検出されたとき、3種類全ての病原体の平均密度は、全サーベイランス時において有意に高かった。
■ 平均値の差は、ウイルスが検出されなかった訪問と比較して、肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスのそれぞれが1.0、0.4、0.7 log10コロニー形成単位相当量だった。
■ コロニー形成している児の率と密度は、ウイルスが検出されなかった受診時よりも、ウイルスが検出された無症状の受診時のほうがより高かった。
結論
■ 鼻洗浄検体中の肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスによるコロニー形成の密度および頻度は、有症状時および無症状時の両方で、ウイルス感染中に増加する。
■ 無症状のウイルス感染中に観察された細菌のコロニー形成の増加は、有症状であったときとほぼ同じだった。
結局、何がわかった?
✅ 上気道感染時、鼻洗浄検体中の肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスはコロニー形成の密度や存在率を高くし、ウイルス感染のみでも増加する。
ウイルス感染時、上気道炎時には、鼻腔内の起炎菌になる細菌保菌率や密度が増加する。ただし、二次感染予防に抗菌薬を使用するのは推奨できない。
■ ウイルス感染時に二次感染が多い理由の一つになりそうな結果です。
■ ただし、風邪罹患時に二次感染を恐れて早期に抗生剤を使う理由にはなりません。すでに軽い感染症(風邪)に対して抗生剤を使用しても、7000人に抗生剤を投与して、「治療可能な」肺炎や扁桃周囲膿瘍を約1名減らす程度という結果が報告されています。
今日のまとめ!
✅上気道感染(風邪)にかかったり、ウイルスが鼻汁内に存在すると、二次感染の原因になり得る起炎菌の密度や頻度が増加する(ただし、二次感染を恐れて抗生剤を早期投与する理由にはならない)。