川崎病発症に、エンテロウイルス感染が関与しているかもしれない

Weng K-P, et al. Enterovirus infection and subsequent risk of kawasaki disease: a population-based Cohort study. The Pediatric infectious disease journal 2018; 37(4): 310-5.

川崎病は、原因不明の疾患です。

川崎病は、5 日以上続く発熱、両側眼球結膜の充血、口唇、口腔所見(口唇の紅潮、いちご舌、口腔咽頭粘膜のびまん性発赤)、不定形発疹、四肢末端の変化、頸部リンパ節腫脹といった症状を呈する、原因不明の疾患です。

川崎病の原因は不明ですが、その中でエンテロウイルス感染が関係しているという報告があります。エンテロウイルスは、コクサッキーウイルス・エコーウイルス・ポリオウイルスなどが含まれます。例えば、手足口病やヘルパンギーナもエンテロウイルスの仲間が原因ウイルスです。

 

台湾国民健康保険の18歳未満の小児データを分析し、エンテロウイルス感染歴と、その後の川崎病発症の関連を検討した。

背景

エンテロウイルス(enterovirus; EV)感染川崎病(Kawasaki disease; KD)との関係は依然として不明である。

■ 本研究の目的は、台湾におけるKDとEV感染との関係を確認するための集団ベースのコホート研究を行うことだった。

 

方法

2000年~2008年までの台湾国民健康保険プログラムの小児資料(年齢18歳未満)を分析するために、集団ベースのコホート研究を実施した。

■ EV感染した児 285,636人とEV感染のない児 285,636人が含まれ、追跡された。
それ以降のKD発症が主要なアウトカムイベントだった。

 

結果

川崎病(KD)の累積発症率は、エンテロウイルス(EV)感染群は非EV感染群より有意に高かった(ログランク検定、P <0.001)

論文から引用。エンテロウイルス感染の有無による川崎病累積発症率(Kaplan-Meier法)。

 

EVに感染歴のある群は、非EV感染群よりもKD発症率が56%高く、調整ハザード比は1.56(95%信頼区間:1.44-1.69)だった

■ 層別分析では、3歳~5歳児・女児・都市化が少ない地域に住む児・親が低所得層・アレルギー疾患のある児において、EV感染既往のある場合のKD発症リスクが高かった

論文から引用。EV感染の既往歴のあるサブタイプでKD発症の推定リスク。

 

 

結論

■ 台湾の小児におけるKD発症とEV感染には、特に3~5歳、女児、都市化が少ない、低所得、アレルギーが関連している。

 

結局、何がわかった?

 ✅エンテロウイルス感染歴のある群は、感染していない群よりも、その後の川崎病発症率が56%高く、調整ハザード比は1.56(95%信頼区間:1.44-1.69)だった。

 

 

川崎病の原因の一つにエンテロウイルス感染が関与するかもしれない(それだけではない)。

■ この結果は、エンテロウイルス感染のみが川崎病の原因であるととい意味ではありませんが、一部、その可能性があることを示しています

■ 低所得が川崎病の発症リスクに影響することは印象にはありませんでしたが、論文では、医療アクセスが困難であることや、川崎病の診断に経験豊富な医師に出会いにくいなどの要因が挙げられていました。医療アクセスの良い本邦では別の結果になるかもしれません。

 

今日のまとめ!

 ✅エンテロウイルス感染は、川崎病の原因のひとつになるかもしれない。

 

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