Bjerre RD, et al. The role of the skin microbiome in atopic dermatitis: a systematic review. Br J Dermatol 2017; 177:1272-8.
菌の多様性が減ることとは、アトピー性皮膚炎の悪化につながるか?
■ Dysbiosisとは、菌の多様性が減ることを指します。
■ 皮膚は完全な清潔区域ではありません。多くの菌が共存しています。人間の社会と同じといえましょう。
■ そして、人間の社会同様、「同じような菌ばかり」は不健全ということになります。
■ 例えば、アトピー性皮膚炎の重篤度があがると、黄色ブドウ球菌が大きく増え、他の菌を抑制します。そしてアレルギーとしては悪化に働きます。
アトピー性皮膚炎とマイクロバイオームの関係に関して検討した報告に関し、システマティックレビューを実施した。
背景
■ Dysbiosisは、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の特徴である。
■ 皮膚のマイクロバイオーム群の構成と、湿疹におけるdysbiosisの因果関係は十分に確立されていない。
目的
■ このレビューの目的は、ADにおける皮膚マイクロバイオームの概要を述べ、dysbiosisとADに因果関係があるかどうかを説明することである。
■ なお、プロトコルはPROSPERO(CRD42016035813)に登録されている。
方法
■ PubMed、Embase、Scopus、ClinicalTrials.govを検索し、ヒトおよび動物モデルにおけるAD患者の皮膚におけるマイクロバイオームに関し培養を利用した検討を使用した。
■ 2人の研究者が、適格性に関する研究の全文を独立してスクリーニングし、バイアスリスクを評価した。
結果
■ 異質性があるため、定量的な合成は行われなかった。
■ 5735件のうち32件が包含基準(17件は既報であり、ヒトに関する11件、動物研究6件だった)を満たした。研究の質は様々であり、異なる方法論を適用していた。
■ AD患者の皮膚は細菌の多様性が低く(皮膚炎がある部位で最も低かった)、3件でMalassezia群の減少と非Malassezia真菌群の多様性が高いことが示された。
■ Staphylococcus aureusおよびStaphylococcus epidermidisの存在量は相対的に増え、Propionibacteriumを含む他の属は減少した。
■ マウスの研究は、Dysbiosisが湿疹を増悪させる病因であることを示した。
■ 良好な特性評価をするには、データが十分に強固ではなかった。
■ ADにおけるdysbiosisは、ブドウ球菌属種だけでなく、PropionibacteriumやMalasseziaなどの微生物も関与していた。
結論
■ マウスにおける湿疹のdisbiosisの役割が、ヒトにも当てはまるかどうかを調査する将来の研究が推奨される。
■ 時間的なダイナミクスと方法論がマイクロバイオームに及ぼす影響は、重要である。
結局、何がわかった?
✅アトピー性皮膚炎患者の皮膚では細菌の多様性が低く、マラセチア群の減少と非マラセチア真菌群の多様性が高いことが示された。
✅黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌量は相対的に上昇し、Propionibacteriumを含む他の属は減少した。
✅マウスの研究では、Dysbiosisが湿疹を増悪させる病因であることを示した。
菌の多様性の低下は、アトピー性皮膚炎の悪化要因になるかもしれない。
■ メタアナリシスが行われていないうえ、ヒトの研究で結果を求めることが出来ていないのですが、Dysbiosisがアトピー性皮膚炎の悪化要因になるかもしれないという結果でした。
■ 皮膚の改善はまた、皮膚の細菌叢の改善にも働くことがわかってきています。
■ それは、菌の産生する抗菌ペプチドによるものかもしれないという報告もあります。
今日のまとめ!
✅菌の多様性の低下はアトピー性皮膚炎の悪化要因になるかもしれないが、まだ研究は不十分である。