Mochizuki H, et al. Palivizumab prophylaxis in preterm infants and subsequent recurrent wheezing. six-year follow-up study. American journal of respiratory and critical care medicine 2017; 196:29-38.
RSウイルスは、繰り返す喘鳴の原因になる。では、RSウイルスを防ぐシナジスは、繰り返す喘鳴を防ぐ?
RSウイルスは冬のウイルスというイメージだったけど、最近は夏でも流行するようになったからね。
特に、シナジスを開始していない早産時はつらい状況だね。
このブログでも、RSウイルスによる細気管支炎後は喘鳴を繰り返すことを紹介してきたね。その流れで、RSウイルス感染時の重篤化を防ぐシナジスを使っていると、その後の喘鳴を減らすかどうかに関して、日本のグループが結果を最近報告している。
その結果をみてみよう。
※冒頭の画像はアッヴィ株式会社のHPから引用しました。
1歳までシナジスを使用した未熟児と、使用しなかった対照群を比較して、6歳までの再発性喘鳴・アトピー性非喘息の発症率を比較した。
理論的根拠
■ Respiratory syncytial virus (RSV)は、乳児の再発性喘鳴のみならず、アトピー性喘息も誘発する。
目的
■ RSV感染後のアトピー性喘息の発症に対する影響を試験するために、抗RSVモノクローナル抗体であるパリビズマブにより生後1歳までの重症のRSV疾患を予防すると、その後6歳までの再発性喘鳴やアトピー性喘息に影響を与えうるかを評価した。
方法
■ 2007年から2008年のRSVのシーズン中に、在胎齢33〜35週の早産児に対する多施設(52施設)観察的前向き症例対照試験に基づき、標準的な医療行為もしくはパリビズマブを投与するかどうかが決め、0〜3歳まで追跡した(Committee on Recurrent Wheezing studyに先行)。
■ その後の、病院の調査者52人は、6歳までこれらの被験者を追跡し、その結果を報告する。
■ 参加者の両親は、医師による報告カードとインターネットを使った携帯電話ベースの報告システムを使用して、再発性喘鳴の評価を報告した。
■ プライマリエンドポイントは、アトピー性喘息の発症率だった。
再発性喘鳴は、12ヵ月間に医師によって診断された3エピソード以上の呼気性喘鳴と定義された。
測定および主な結果
■ 登録された未熟児444人中349人が生後1年間パリビズマブを投与された。
■ 6歳までに、アトピー性喘息の発症率は治療群15.3%と未治療群18.2%であり、有意差はみられなかった(P = 0.57)。
■ 一方、医師が診断した再発性喘鳴は、治療群15.3%、未治療群31.6%だった(P = 0.003)。
論文より引用。
A) ITT解析。介入群(Treated)と非介入群(Untreated)で再発性喘鳴に有意差あり(p<0.001)。
B) Per-protcol解析。 同様に有意差あり(p<0.001)。
C) アトピー性喘息population analysis。やはり再発性喘鳴は有意に低下(p=0.014)。
結論
■ 早産児に投与されたパリビズマブによるRSV予防は、アトピー性喘息の発症を抑制しなかったが、6歳までの再発性喘鳴の発症率をが有意に低下させた。
結局、何がわかった?
在胎齢33〜35週の早産児に対し、1歳までシナジスを使用すると、
✅ 6歳までのアトピー性喘息の発症率は治療群15.3%と未治療群18.2%であり、有意差はみられなかった(P = 0.57)。
✅ 6歳までの医師が診断した再発性喘鳴は、治療群15.3%、未治療群31.6%だった(P = 0.003)。
シナジスが、RSウイルスによる再発性喘鳴リスクを減らしうるという結果。
■ RSウイルスは、その後の喘息発症リスクになることが示されています。
■ シナジスは極めて高価な薬剤ですので、全員に使用できるとは言えませんが、RSウイルスによる繰り返す喘鳴は、RSウイルスによる重篤化を防ぐことで減らし得るという重要な結果と思います。
今日のまとめ!
✅未熟児に対するシナジスは、6歳までの再発性喘鳴リスクを減らす。