妊娠前・妊娠中の母親の食事は、子どもの喘鳴や喘息リスクと関連するか?
■ アレルギー疾患で通院している患者さんの保護者さんかた尋ねられるテーマのひとつに『妊娠中や妊娠前の食事』があります。
■ しかし、このテーマに関する報告はすくなく、米国のVivaプロジェクトというの 出産前コホート研究に限られます。
Hanson C, Rifas-Shiman SL, Shivappa N, et al. Associations of Prenatal Dietary Inflammatory Potential with Childhood Respiratory Outcomes in Project Viva. The journal of allergy and clinical immunology In practice. 2020;8(3):945-952.e944.
■ そして、出生前の母親の食事と、子どもの喘鳴や喘息の発症リスクに関し、日本の大規模コホート研究、エコチル研究から、興味深い研究結果が報告されています。
※研究結果にもあるように、差は10%程度であり、『妊娠中の食事が偏っていたから子どもが喘息になった』という話をしているわけではありません。ただし、もしより良い食事があるかという話題があるとすれば、『バランスの良い食事が望ましい』という結果です。
Okubo H, Nakayama SF, Ohya Y, Environment J, Group CsS. Periconceptional maternal diet quality and offspring wheeze trajectories: Japan Environment and Children's Study. Allergy; n/a.
日本の大規模出生コホートエコチル研究から母子70,530組のデータから、妊娠第1期以前の1年間の母親の食事を、日本食品ガイドから評価した。
背景
■ 小児期の喘鳴とその後の喘息リスクに対する出生前の食事の役割については、結論が出ていないが、これは喘鳴のフェノタイプが不均一であることが一因であるとされている。
■ 本研究は、幼児期における喘鳴の経過を同定し、その経過と妊娠周産期の母親の食事の質との関連を検討することを目的とした。
方法
■ 日本環境と子ども調査(Japan Environment and Children's Study)の70,530組の母子データを分析した。
■ 喘鳴は、1歳から4歳まで毎年、修正国際小児喘息・アレルギー調査(International Study of Asthma and Allergies in Childhood)のアンケート調査を用いて保護者から報告され、集団ベースの経過モデリングを用いて経過を導出した。
■ 妊娠第1期以前の1年間の母親の食事は、有効な食物摂取頻度調査票を用いて評価された。
■ 全体的な食事の質は、日本食品ガイドのスピニングトップに基づくバランスのとれた食事スコアを用いて決定された。
■ 母親の食事の質と幼児期の喘鳴の軌跡との関連を多項ロジスティック回帰モデルのベイズ推定を用いて検討した。
結果
■ 4つの喘鳴の経過が同定された:「全くない/頻繁ではない」(69.1%、基準群)、「乳幼児期早期発症」(6.2%)、「一過性早期」(16.5%)、「持続性」(8.2%)。
■ 交絡因子の調整後、母親のバランスのとれた食事スコアの四分位が高いほど、「一過性早期」および「持続性」の喘鳴のリスクは「全くない/頻繁ではない」喘鳴のリスクと比較していずれも10%低かった。
■ 母親のバランスのとれた食事スコアは、「幼児期早期発症」喘鳴のリスクとは関連していなかった。
結論
■ 妊娠前の母親の食事の質を改善することにより、幼児期における特定の喘鳴フェノタイプを軽減できる可能性がある。
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