Nagao M, et al. Early control treatment with montelukast in preschool children with asthma: A randomized controlled trial. Allergology international 2018; 67(1): 72-8.
海外と異なる日本の小児喘息の重症度判定。はやめにコントローラーを導入することは正しいか?
日本の喘息ガイドラインは、はやめにコントローラー(定期薬)を導入することを勧めているよね?
日本の小児を対象にしたガイドラインは、「月に1回以上の発作」を「軽症持続型」として、少量の吸入ステロイド薬や抗ロイコトリエン拮抗薬(シングレアやオノンなど)を勧めているね。
海外のガイドラインはその回数だとまだ定期薬(コントローラー)は導入せずに、その時毎の治療をするとしているね。
どちらが正しいのさ?
僕は日本のガイドラインがいいんじゃあないかなあと思っているけど、どちらがより子ども達にメリットが多いかを今後検討してい必要があるだろうね。
そして、その検討のうちのひとつといえる研究結果が、最近発表されているよ。この研究は、あえて海外と異なる方法を推奨している日本からこそ、発表された意義のある検討といえると思う。
結果をみてみよう。
※冒頭のシングレアの画像は、MSDのページから引用しました。
1~5歳の月1回以上・週1回未満の喘息症状のある児93人に対してモンテルカスト(シングレア)を48週間投与し、対照群に比較して吸入ステロイド薬を用いたステップアップ治療を必要とするまでの期間などを比較した。
背景
■ 日本のガイドラインは、未就学児の月に1回以上の喘息症状に対し、初期コントロール治療を推奨しているが、西洋のガイドラインは推奨していない。
■ この集団に対し、モンテルカストによる喘息コントローラー治療が、必要時のβ2刺激剤よりも効果的であるかどうかを確認するために、ランダム化比較試験を実施した。
方法
■ 対象となる患者は1~5歳の小児であり、喘息症状は月に1回以上で週に1回未満だった。
■ 患者を1:1でランダム化し、48週間、必要時のβ2刺激剤もしくはモンテルカスト4mgを連日投与した。
■ 主要評価項目は、吸入ステロイド薬を用いたステップアップ治療を開始する前の急性喘息増悪数だった。
■ この研究は、大学病院医療情報ネットワーク臨床試験レジストリ番号UMIN000002219に登録されている。
結果
■ 2009年9月~2012年11月までに、93人(モンテルカスト群47人、コントローラーなし群46人)が研究に登録された。全ての患者は解析に含まれた。
■ 研究中、モンテルカスト群13人(28%)および、コントローラーなし群の23人(50%)は、それぞれ1年間に平均0.9回、もしくは1.9回 /年の喘息急性増悪を示した(P = 0.027)。
この研究中に急性喘息増悪しなかった患者の割合。急性喘息増悪の最初の発症までの期間はログランク検定で有意差あり(P = 0.004)。
■ さらに、それぞれ10人(21%)および19人(41%)がステップアップ治療を受けた。
■ ステップアップ治療の累積発生率は、モンテルカスト群が有意に低かった(ハザード比0.45,95%信頼区間0.21〜0.92; P = 0.033)。
試験期間中、吸入ステロイド薬にステップアップ治療を必要としなかった患者の割合。ステップアップ治療の開始までの期間はログランク検定で有意差あり(P = 0.033)。
1ヶ月あたりのβ2刺激剤の使用日数。
結論
■ モンテルカストは、月に1回以上週に1回未満の喘息症状がある未就学児に対する有効な治療法である。
結局、何がわかった?
月に1回以上、週に1回未満の喘息症状のある1~5歳の児に対し、シングレアを定期内服すると、内服しない群に比較して、
✅それぞれ1年間に平均0.9回、もしくは1.9回 /年の喘息急性増悪があり、有意差があった(P = 0.027)
✅ステップアップ治療(吸入ステロイド薬導入)の累積発生率は、シングレア群が有意に低かった(ハザード比0.45; 95%信頼区間0.21〜0.92; P = 0.033)。
シングレアの早期導入は、吸入ステロイド薬導入率を下げるようだ。
■ この研究は、日本独自の重症度設定が、けっして間違いではない、むしろ小児喘息のコントロールを改善させることを示した研究結果といえましょう。
■ 最近シングレアは、喘鳴にも短期的にも有効かもしれないという報告があります。
■ 個人的には、シングレアを導入するならば数ヶ月は少なくとも継続してから減量を、と考えてきましたが、短期的な導入も含めてさらに検討を要するかもしれないと考え始めています。
今日のまとめ!
✅未就学児の、月1回以上・週1回未満の喘息症状に対し、シングレアの定期内服は、喘息発作やβ刺激薬の使用を減らし、吸入ステロイド薬の導入率も少なくするかもしれない。