魚卵特異的IgE抗体価による報告がふえてきています。では、タラコに関し、特異的IgE抗体価は有用でしょうか?
日本人のアレルギーの6位に位置しているそうだよ。
じゃあ、データも沢山でているの?
実際、イクラやタラコ特異的IgE抗体価は役に立つの?
ただ、短報で抄録がないことと本文がフリーで確認できないので、ブログでは紹介していないけど、、
今回、タラコに関しての報告が報告されて、例数が少ないながらやはり臨床に即した報告だから、読んでみようか。
Makita E, et al. Increased ratio of pollock roe-specific IgE to salmon roe-specific IgE levels is associated with a positive reaction to cooked pollock roe oral food challenge. Allergology international 2018; 67(3): 364-70.
タラコ負荷試験を実施された51人(年齢中央値 6.8歳)に関し、タラコ特異的IgE抗体価・イクラ特異的IgE抗体価により陽性予測ができるかを評価した。
背景
■ 魚卵によるアナフィラキシーや即時型アレルギーが世界中で報告されており、日本では、魚卵は第6位の一般的な食物アレルゲンである。
■ イクラ(salmon roe ;SR)と交差抗原性が高いとされ、タラコ(pollock roe;PR)の経口食物負荷試験(oral food challenges;OFCs)は、実施されてこなかった。
■ したがって、PRに過敏性のある患者のPRとSR特異的免疫グロブリンE(IgE)抗体価およびアレルギー反応を評価するために、加熱PRを用いてOFCを実施した。
方法
■ 2006年4月から2016年11月に、加熱されたタラコ(PR) 10~20gで負荷試験が実施された患者の特徴と反応性を評価する後ろ向き研究を行った。
結果
■ 51人(年齢中央値 6.8歳)が評価された。
■ 全員がタラコ(PR)に感作されており、6例(12%)はPRに対する即時反応歴があり、18例(35%)はイクラ(SR)に対する即時反応歴があった。
■ PR特異的およびSR特異的IgE抗体価の中央値は、それぞれ3.4kUA / Lおよび9.9kUA / Lだった。
■ 7人(14%)がOFC陽性だったが、アナフィラキシーはなかった。
■ 誘発症状は軽度であり、限局性蕁麻疹、のどの痒み、断続的な咳嗽、軽度の腹痛だった。
■ 経口抗ヒスタミン剤を用いて軽度の腹痛のあった1人を治療した。
■ SR特異的IgEについて、OFC陽性患者とOFC陰性患者に、即時反応歴やPRおよびPR特異的IgE抗体価の有意差はなかった。
論文より引用。タラコ特異的IgE抗体価の有用性は低いが、タラコ/イクラ特異的抗体価の比はAUCが高い。
■ しかし、SR特異的IgE抗体価で調整されたPR特異的IgE抗体価に有意差が見出され(p = 0.025)、PR特異的IgE / SR特異的IgE比にも有意差があった(p = 0.009)。
論文から引用。タラコ特異的抗体価はあまり陽性予測に有用でないが、タラコ/イクラ特異的抗体価の比は陽性予測に有用。
結論
■ SR特異的IgE抗体価で調整されたPR特異的IgE / SR特異的IgE比やPR特異的IgE抗体価上昇は、OFC陽性の危険因子だった。
結局、何がわかった?
✅加熱タラコ10~20gで経口負荷試験を行い、陽性予測に関する検討を行ったところ、イクラ特異的IgE抗体価で調整されたタラコ特異的IgE抗体価で陽性予測に有意差が見出され(p = 0.025)、タラコ特異的IgE / イクラ特異的IgE比も有意差が認められた(p = 0.009)。
✅これらをもとに、タラコ特異的IgE / イクラ特異的IgE比によるプロバビリティカーブが作成された。
加熱タラコの経口負荷試験陽性予測に対し、タラコ特異的IgE抗体価自体よりもタラコ/イクラ特異的抗体価の比が有用。
■ 例数が多くないことと陽性例も7例とすくないことから、このまま臨床に使う場合には慎重さも必要でしょうけれどもイクラ特異的IgE抗体価との比を考慮するというのは面白いですね。
■ 「加熱」タラコであることから、生では症状が出やすくなることが予測されますので、実際の運用には注意が必要かもしれません。
■ それでも臨床に即した報告と思います。
今日のまとめ!
✅加熱タラコ負荷試験の陽性予測は、タラコ/イクラ特異的IgE抗体価の比が有用。