十全大補湯は中耳炎の再発を減らすか?:ランダム化比較試験

十全大補湯が、中耳炎の反復を少なくするという報告があります。そのランダム化比較試験。

うさみん
外来で、「中耳炎を繰り返すんですけど、何か免疫がおかしいんじゃないでしょうか?」という質問を受けたんですけど、どこまで検査した方がいいんでしょう?

ほむほむ
もちろん、本当の免疫不全もあるし、血清 IgG2値の低下による感染の反復もありうるから、病歴に応じては検査をしてもいいかもしれないね。でも、その頻度は多くはないよ。

うさみん
保育園にいきはじめて風邪を繰り返すようになって、中耳炎や風邪を繰り返す様になった場合は、「いかにも感染をもらいやすい状況」の経過で免疫不全とは考えにくいですよね?そんな場合になにか方法はないのでしょうか?

ほむほむ
ひとつは、γグロブリンを使う方法があるかもしれないね。
「血清 IgG2値の低下を伴う、肺炎球菌又はインフルエンザ菌を起炎菌とする急性中耳炎、急性気管支炎又は肺炎の発症抑制に用いる」とされている。もちろん、検査をしてからの補充になるし、保険上6回までになる。
でも、注射製剤だし繰り返し使用する必要性があるからハードルが高いよね。
そこで、漢方薬である十全大補湯を使う方法があるかもしれない。
以前、前後比較研究で紹介したけど、シングルブラインドのランダム化比較試験の報告があるからみてみよう。

 

 

Ito M, et al. Randomized controlled trial of juzen-taiho-to in children with recurrent acute otitis media. Auris Nasus Larynx 2017; 44:390-7.

反復性中耳炎の傾向のある生後6-48ヶ月児を十全大補湯内服群と内服なし群にランダム化し、3ヶ月間観察した。

目的

小児における反復性急性中耳炎(acute otitis media; AOM)は世界中で急速に増加している。

■ 抗生物質の反復使用は、抗生物質に耐性菌を発生させる。

■ 補完的・代替的な医学的手法は、従来の抗菌薬の補足的治療選択肢として提案されている。

■ このランダム化並行群間オープンラベル非漢方薬の対照試験では、中耳炎に罹患している児のAOM予防のための伝統的な和漢であるJTT(juzen-taiho-to)の効能を評価した。

 

方法

■ 反復性AOMの傾向がある生後6-48ヶ月児は26の耳鼻科診療所からリクルートされた。そして、JTT1日2回の内服投与(0.10-0.25g / kg / day)の有無にかかわらず、日本のガイドラインに基づく一般的なAOM治療を実施された。

■ 3ヶ月の介入期間中、AOMのエピソードの平均回数、鼻風邪のエピソード、月あたりの総抗生物質投与期間を比較した。

 

結果

■ フォローアップ中に少なくとも1回のAOMのエピソードが、JTT群 71%と対照群 92%に診断された。

十全大補湯(JTT)投与は、従来の治療単独を受けた児と比較してAOMエピソードの頻度を57%減少させ(0.61±0.54 vs 1.07±0.72 AOM事例/月; P = 0.005)、また鼻風邪のエピソード数(P = 0.015)および総抗生物質投与(P = 0.024)を有意に減少させた。

 

結論

■ これは、漢方薬による再発性AOMに対する最初の報告である。

■ JTTは小児の再発性AOMを効果的に予防すると思われる。

■ 再発性AOMや上気道感染に対するJTTの有益な効果を確認するために、さらに二重盲検試験が必要である。

 

結局、何がわかった?

 ✅十全大補湯は、従来の中耳炎の治療のみを受けた児と比較して中耳炎の頻度を57%減少させ(AOMの回数が1月あたり0.61回±0.54 vs 1.07回±0.72; P = 0.005)、また鼻風邪の回数(P = 0.015)や抗生物質総投与量(P = 0.024)も有意に減少させた。

 

 

十全大補湯は、中耳炎や上気道炎の頻度をへらす。

■ 十全大補湯の中耳炎の抑制効果は、すでに前後比較試験が報告されていました。

■ その効果をランダム化比較試験で確認したと言えましょう。

■ ただし、シングルブラインド試験でありダブルブラインド試験ではないこと、規模が小さい試験であることに注意を要します。

 

今日のまとめ!

 ✅小児の反復性中耳炎に関し、十全大補湯は中耳炎や上気道炎、抗生剤使用量をへらす。

 

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