環境整備がアレルギー疾患の治療に有効かを示した報告は「効果あり」と「効果なし」に分かれ、結論がでているとは言えません。
■ 環境整備(例えばダニを減らす)と言った方法に関し、アトピー性皮膚炎や喘息に有効かどうかははっきりしていません。
■ やや古い報告ですが、Lancetに報告された、ダニを通さないカバーを中心とした介入を実施したランダム化比較試験をご紹介します。
Tan BB, et al. Double-blind controlled trial of effect of housedust-mite allergen avoidance on atopic dermatitis. The Lancet 1996; 347:15-8.
アトピー性皮膚炎患者48人(成人24人 [平均30歳]と小児24人 [平均10歳])に対し、ダニ不透過カバー、ダニを殺すスプレー、高性能掃除機により介入し、6ヶ月後のアトピー性皮膚炎重症度を比較した。
背景
■ アトピー性皮膚炎の病因におけるダニ(HDM)アレルゲン(Der p1)の役割は議論の余地がある。
■ 私たちは家庭のHDMアレルゲンの量を減らすとアトピー性皮膚炎が改善するという仮説を検証した。
方法
■ 介入治療群はGoretexベッドカバー(プラセボ群は綿カバー)、ベンジル・タンニン酸塩スプレー(プラセボ群は水スプレー)、高ろ過掃除機(プラセボ群は従来の家庭用掃除機)で構成された。
■ マットレスカバー、ベッドルーム、リビングルームのカーペットからハウスダストを毎月採取した。
■ 48人(成人24人 [平均30歳]と小児24人 [平均10歳])が6ヶ月の研究を完了した。
■ 介入群は28人、プラセボ群20人だった。
結果
■ Goretexで覆われたマットレスから集められたハウスダスト重量は、介入1ヵ月で98%減少した(386から9mg / m2)。
■ プラセボカバーは、ハウスダスト量の減少は少なかった(361から269 mg / m2)。
■ 介入群とプラセボ群の6カ月後の差は有意だった(p = 0.002)。
■ 介入群およびプラセボ群の両方において寝室およびリビングルームのカーペットのDer p1濃度が有意に減少したが、群間の差は有意ではなかった。
■ 湿疹の重症度は両群で低下した。
■ しかし、介入群は、重症度スコア(最終スコアの差の平均が4.3単位 [p = 0.006])および湿疹のある部位(平均10% [p = 0.006])が有意に改善した(最初のマットレス中のハウスダスト量とカーペットのDer p1量との共分散を共変量として解析)。
■ 共変量の最終値を示す解析により、治療効果の大部分がマットレスダスト/カーペットのDer p1の減少によるものであることを示された。
解釈
■ アトピー性皮膚炎は、効果的なダニ回避によって大幅に改善することができる。
■ そのような手段から最も利益を受ける個人を特定する方法が必要である。
結局、何がわかった?
✅高密度繊維カバー中心におこなった環境整備により、介入群もプラセボ群もアトピー性皮膚炎の重症度は低下した。
✅介入群は、重症度スコア(最終的な重症度のスコアの差の平均が4.3単位 [p = 0.006])・湿疹のある部位(平均10% [p = 0.006])が有意に改善した。
アトピー性皮膚炎に対し、環境整備で有効とする報告と有効でないとする報告があり、最近行われたシステマティックレビューでも結論はでていない。
■ 以前、ダニを通さないカバーで喘息をより改善させるという大規模ランダム化比較試験や、ゴキブリの駆除で喘息を改善させるというランダム化比較試験をご紹介しました。
■ 一方で「効果がない」とする報告も多いです。
■ その上で、最近実施されたシステマティックレビューでは「結論できない」になっています。
■ なぜこの差がでるのかは、まだ十分判明しているとはいえませんが、これらの結果を合わせると、個人的には「とくに汚染されている環境を選んで環境整備を行い、十分に減らすことが出来れば」効果がある、と考えています。
■ 私は、環境整備に関しては基本的には指導しています。さらに、必要時には高密度繊維カバーなども推奨することがあります。ただ、高密度繊維カバーは高価ですので、それほど強くは推奨していません。難しいところです。
今日のまとめ!
✅このランダム化比較試験では環境整備はアトピー性皮膚炎に有効だったが、結論が出ているとはいえないようだ。