帝王切開分娩が、アレルギー疾患の発症リスクになるかもしれないという報告が増えています。
■ 事前にお話ししておきたいのは、私は帝王切開分娩を否定するつもりは全くありません。
■ 本邦における新生児死亡率は世界でも最も低い状況となっており、それは誇れることです。
■ 帝王切開分娩によりアレルギー疾患が増える理由に、膣内での細菌曝露が減ることがあるのではないかと考えられています。
■ その細菌叢への介入を今後考えていく必要があるかもしれない、そういった道標になるかもというテーマです。
Mitselou N, et al. Cesarean delivery, preterm birth, and risk of food allergy: Nationwide Swedish cohort study of more than 1 million children. J Allergy Clin Immunol 2018; 142:1510-4.e2.
スウェーデンで生まれた小児1,086,378人を対象とし、帝王切開分娩などの周産期の特徴と、その後の食物アレルギー発症リスクの関連を評価した。
背景
■ 小児の食物アレルギーにおける小児期早期の危険因子についてはよくわかっていない。
目的
■ 周産期の特徴と食物アレルギーの将来のリスクとの関連を調査した。
方法
■ 2001 - 2012年にスウェーデンで生まれた小児1,086,378人を対象としたこの全国規模のスウェーデンのコホート研究は、医療記録からの前向きに記録されたデータを使用した。
■ Cox回帰を利用し、周産期の特徴(例:帝王切開と早産)とNational Patient Registerの診断によって定義される食物アレルギーとの関連についてハザード比(hazard ratios; HR)と95%CIを推定した(乳児の性別および、出生時年齢・出生国・経産歴・喫煙・BMI、喘息/肺疾患といった母の要因で調整)。
結果
■ 13年間の追跡調査期間中、小児 26,732人(2.5%)が食物アレルギーの診断を受けた。
■ 食物アレルギーは、帝王切開分娩(HR 1.21; 95%CI 1.18-1.25)、在胎不当過大(HR 1.15; 95%CI 1.10-1.19)、Apgarスコア5分値低値(HR 1.22; 95%CI 1.10-1.36)が有意に関連したが、早産(妊娠32週未満; HR 0.74; 95%CI 0.56-0.98)に対しては負の関連があった。
■ 食物アレルギーと中程度の早産、低出生体重児、在胎不当過小に関連性は見られなかった。
■ 転帰が食物アレルギーと診断した2件の記録に限定されている場合、リスク推定値は同様であった。
■ 帝王切開分娩を受けた小児1,000人は、対照群と比較しさらに5件の食物アレルギーを発症しており、帝王切開分娩によって生まれた児における食物アレルギーの17%がこの帝王切開分娩によって説明できることを示唆する。
結論
■ 帝王切開分娩は食物アレルギーのリスク増加と関連していたが、早産(出生時在胎期間が32週未満)でリスクが減少した。
結局、何がわかった?
✅ 帝王切開分娩による食物アレルギー発症リスク増加は、ハザード比 1.21倍(95%CI 1.18-1.25)、在胎不当過大でハザード比 1.15倍(95%CI 1.10-1.19)、Apgarスコア5分値低値でハザード比 1.22倍(95%CI 1.10-1.36)と推定された。
帝王切開とマイクロバイオーム。
■ 繰り返しになりますが、帝王切開を否定するつもりはなく、このアレルギーを増やす機序を解明していく必要性があるということでしょう。
今日のまとめ!
✅ 帝王切開分娩は、食物アレルギーの発症リスクをあげるが、早産はむしろリスクを低下させるようだ。