アトピ—性皮膚炎が、全身性の疾患と関連するという報告が増えています。
■ アトピ—性皮膚炎が、皮膚の局所の感染症を増やすことに関しては、多くの賛同が得られるでしょう。
■ 一方、アトピ—性皮膚炎が全身性の疾患に関連するかもしれないという報告が増えて来ており、長期化・重症化の問題を先送りにはできないことが注目されるようになっています。
■ 今回は、アトピ—性皮膚炎と貧血の関連を検討した大規模横断研究をご紹介します。
Drury KE, et al. Association Between Atopic Disease and Anemia in US Children. JAMA Pediatr 2016; 170:29-34.
米国国民健康インタビュー調査(NHIS)による小児と青年207,007人と、国民健康栄養調査(NHANES)における小児と青年30,673人から得たデータを用いて、アレルギー疾患と貧血の関連を調査した。
重要
■ アレルギー性疾患は、慢性炎症、食物アレルゲン除去、全身性免疫抑制性の薬物の使用に関連している。
■ これらすべての要因は貧血と関連があることが示されている。
目的
■ アレルギー性疾患が小児の貧血リスクの増加と関連しているかどうかを調査した。
デザイン、セッティング、参加者
■ 横断調査と検査は、小児と青年207,007人を含む1997 ~ 2013年の米国国民健康インタビュー調査(National Health Interview Survey; NHIS)と、小児と青年30,673人を含む1999~ 2012年の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey; NHANES)から得たデータを用いて行われた。
■ データの解析は、2014年8月1日から2015年8月28日に実施された。
曝露
■ 保護者が報告した湿疹、喘息、花粉症、および/または食物アレルギーの既往歴。
主な結果と測定
■ 貧血は、NHISにおける保護者の報告と、NHANESにおける年齢/性別ごとのヘモグロビン値によって定義された。
結果
■ すべての小児において、年齢、性別、人種/民族、家庭の教育水準、所得群を代表した、NHISからの小児と青年207,007人に関するデータが収集された。
■ NHISにおける全年年齢から、医療者により診断された湿疹に対する米国の有病率は9.5%(95%CI 9.4% - 9.7%)、喘息は12.8%(95%CI、12.6% - 13.0%)、花粉症は17.1% (95% CI, 16.9%-17.3%)、食物アレルギーは4.2% (95% CI, 4.1%-4.3%) 、貧血は1.1%(95%CI、1.1%-1.2%)だった。
■ 年齢、性別、人種/民族、世帯の年間収入、家族の最高学歴、保険の適用範囲、世帯の人数、米国の出生地、喘息歴、花粉症で調整した多変数ロジスティック回帰モデルにより、貧血は17研究のうち14研究で湿疹に、11研究で喘息に、12研究で花粉症に、12研究で食物アレルギーと関連していた。
■ NHISにおける多変量解析で(結果は補正オッズ比[95%CI]として報告)、湿疹(1.83; 1.58-2.13)、喘息(1.31; 1.14-1.51)、花粉症(1.57; 1.36-1.81)、食物アレルギー(2.08; 1.71-2.52)の児は貧血の可能性が高かった(P <すべて.001) 。
■ NHANESでは、喘息(1.33; 1.04-1.70; P = .02)と湿疹(1.93; 1.04-3.59; P = .04)における現在の病歴は、貧血、特に小球性貧血のより高い確率と関連していた(喘息 1.61; 1.09-2.38; P=. 02; 湿疹 2.03; 1.20-3.46; P=. 009)が、花粉症の既往歴は、貧血 (0.85; 0.62-1.17; P=. 33)と関連していなかった。
結論と妥当性
■ アレルギー性疾患と貧血との関連は複数のコホートにおいて再現可能だった。
■ アレルギー性疾患と貧血の関連の決定要因を特定するために前向き研究が必要とされている。
結局、何がわかった?
✅ 米国国民健康インタビュー調査(NHIS)による小児と青年207,007人において、貧血のリスクが、アトピ—性皮膚炎で1.83倍(1.58-2.13)、喘息で1.31倍(1.14-1.51)、花粉症で1.57倍(1.36-1.81)、食物アレルギーで2.08倍(1.71-2.52)リスクが高かった(P <すべて.001) 。
アレルギー疾患は、貧血のリスクをあげるかもしれない。
■ アトピ—性皮膚炎から貧血リスクがあがる要因や因果関係に関してははっきりわかっていないようですが、食物アレルギーでよりリスクが高いことから考えると栄養の問題があるようです。
■ アトピ—性皮膚炎に関し、発症リスクが高い児に対して保湿を最初からしっかり始めたり、早めに介入して重症度を下げられるように治療介入する、さらに栄養面、貧血に関して配慮する必要があるかもしれません。
■ 例えばアトピ—性皮膚炎が重症化して受診された児に関しては、小球性貧血の検査を追加するなどです。個人的には低年齢で初診されて血液検査を実施する場合は、鉄の検査も追加することが多いです。
今日のまとめ!
✅ アトピ—性皮膚炎・アレルギー疾患は、貧血のリスクをあげるかもしれない。