本邦における、幼児期のアトピー性皮膚炎は減少傾向にあります。
■ 本邦における学校保健統計調査(平成26年度)では、幼稚園におけるアトピー性皮膚炎の有症率が2.37%で過去最低になったと報告されました。
■ では、別の国ではどうでしょう?ノルウェーからの報告をご紹介します。
Mohn CH, et al P. Incidence trends of atopic dermatitis in infancy and early childhood in a nationwide prescription registry study in Norway. JAMA Network Open 2018; 1:e184145-e.
2009年1月1日から2015年12月31日までのノルウェー在住の6歳未満のすべての児に対し、処方箋から推定したアトピー性皮膚炎の有症率を求めた。
重要性
■ 多くの国でアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)の罹患率が増加しており、他のアレルギー症状への進行を支持するエビデンスとともに、ADは世界中の公衆衛生上の懸念事項になってきた。
■ この疾患は1950年代から増加しているが、最近のいくつかの研究では、定常状態または減少傾向が示唆されている。
目的
■ 小児集団全体におけるADの発症率(incidence rate ; IR)を決めるために、処方データに基づいた全国健康記録を解析する。
デザイン、セッティング、参加者
■ 2009年1月1日から2015年12月31日までのノルウェー在住の6歳未満のすべての児は、このコホート研究に含まれていた。
■ この集団ベースの処方箋登録研究では、医学的診断と疾患に特異的に使用される薬剤が、ADに罹患している児を特定するための代用として用いられた。
■ 処方箋調査は2016年に終了した。
■ 2016年8月から2017年12月まで、疾患特異的処方、総数295286件が分析された。
■ この仮説は、データ収集の前、中、後に定められた。
主な成果と計測
■ ステロイド外用薬の少なくとも2回の処方または、カルシニューリン阻害剤外用薬の少なくとも1回の処方に基づいた、ADまたは湿疹の医学的診断を有する全ての児。
■ 人・年当たりの発生率(per person-year; PY)およびIR比を計算した。
結果
■ 計295286の疾患特異的である処方箋が122470人の小児に処方され、63460人がADに罹患しており、5600人(88.3%)が処方箋と関連するADの診断に結び付けられた。
■ ノルウェーの年間調査の対象年齢(6歳未満)は、2009年の357451人の小児から2015年の373954人に増加した。
■ 全体として、IRは、2009年の年・人あたり0.028(年・人あたり95%CI 0.028-0.029)から2014年の年・人あたり0.034(年・人あたり95%CI 0.033-0.035)まで増加した。
■ 1歳未満の小児では、IRは2009年の年・人あたり0.052(年・人あたり95%CI 0.050-0.053)から、年・人あたり0.073(年・人あたり95%CI 0.071-0.075)に増加した。
■ この年齢層では、IRは女児に比べて男児で53%高かった(IR比1.53; 95%CI 1.49-1.57; P <.001)。
■ 6歳までの発症率は17.4%(95%CI 17.2%-17.7%)だった。
■ AD発症の主要な季節は冬と春だった。
結論と妥当性
■ この全国的な調査は、小児ADのIR、特に1歳未満小児におけるIRの増加を示唆している。
■ この研究による知見は、冬と春の季節にIRがより高率になることを示唆している。
■ アトピー性皮膚炎は、女児に比較して男児の発症時期がより早かった。
■ 調査期間中、6歳未満の6人の児のうち1人以上が、ある時点でADの影響を受けていた。
結局、何がわかった?
✅ 1歳未満の小児では、アトピー性皮膚炎の発症率は2009年の年・人あたり0.052(年・人あたり95%CI 0.050-0.053)から、年・人あたり0.073(年・人あたり95%CI 0.071-0.075)に増加した。
✅ 女児に比べて男児でアトピー性皮膚炎の発症率が53%高かった(IR比1.53; 95%CI 1.49-1.57; P <.001)。
✅ 6歳までのアトピー性皮膚炎の発症率は17.4%(95%CI 17.2%-17.7%)だった。
処方箋からの推測のためやや正確性は欠けるが、ノルウェーでは1歳未満のアトピー性皮膚炎が増加していた。
■ 本邦とノルウェーで、乳児期のアトピー性皮膚炎の発症率の動きに差がでた理由ははっきりしていません。
■ ただ、本邦でアトピー性皮膚炎が減少したのは、2014年前後から「新生児期から保湿剤を塗る」というプラクティスが普及し始めたからかもしれません。
■ 実際にここ数年、乳児期の最重症のアトピー性皮膚炎を診療する頻度が大きく減った印象があります。
■ もし保湿剤による発症予防効果であるならば、さらに普及を目指すことでアトピー性皮膚炎のお子さんが減るかもしれません。ただし、本邦の調査では小学校以降では横ばいともされており、保湿剤を使用して予防されたお子さん方のその後の経過を見ていく必要があるでしょう。
今日のまとめ!
✅ ノルウェーでは、1歳未満のアトピー性皮膚炎の有症率が上昇している。