デュピルマブは、成人の重症アトピー性皮膚炎に保険適応がおりている生物学的製剤です。
■ デュピルマブは、重症アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤であり、IL-4α受容体を阻害することで、IL4/IL13のシグナル伝達を低下させ、有意な効果を示します。
■ あくまで炎症性サイトカインのシグナル伝達を抑える薬剤なのですが、皮膚のバリアの指標も徐々に改善させることが報告されていましたのでご紹介いたします。
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Guttman-Yassky E, et al. Dupilumab progressively improves systemic and cutaneous abnormalities in patients with atopic dermatitis. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2019; 143:155-72.
中等症以上の成人アトピ—性皮膚炎 54人に対し、16週間デュピルマブを投与し、様々なマーカーの変動を確認した。
背景
■ アトピー性/アレルギー性疾患を有する患者におけるその有効性により示されるように、デュピルマブは、IL - 4、IL-13、2型炎症の重要な促進因子のシグナル伝達を阻害するIL-4α受容体抗体である。
目的
■ このプラセボ対照二重盲検試験(NCT01979016)は、中等症から重症のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)患者の分子/細胞障害性、病変のない皮膚のフェノタイプ、全身性の2型バイオマーカーに対するデュピルマブの有効性、安全性、影響を評価した。
方法
■ 皮膚の生検標本と血液は、毎週16週間のデュピルマブ200mgもしくはプラセボ投与皮下投与された、1:1にランダム化された54人から評価された。
結果
■ デュピルマブは、 プラセボに比較してADの臨床徴候や症状を有意に改善し、忍容性は良好であり、病変のトランスクリプトームを非病変性のフェノタイプへと徐々にシフトさせた(治療開始後4〜16週)。
■ メタ解析由来のADトランスクリプトーム(病変のある皮膚と病変のない皮膚で区別して発現される遺伝子)の改善の平均は、デュピルマブ群では68.8%および110.8%、プラセボ群それぞれ-10.5%および55.0%だった(それぞれ4週および16週、CCL17 CCL18 CCL26)。
■ そして、表皮過形成(keratin 16)、T細胞、樹状細胞(CD11cIL17A)、表皮分化、皮膚バリア、脂質代謝遺伝子(フィラグリン、ロリクリン、クローディン、=.0002)の発現が並行して増加した。
■ 臨床的、組織学的測定における改善は、遺伝子発現の変化と有意に相関していた。
■ デュピルマブはまた、CCL17、CCL18、ペリオスチン、総IgE値、アレルゲン特異的IgE抗体価を含む2型由来の血清バイオマーカーを有意に抑制した。
結論
■ デュピルマブによって媒介される、IL-4受容体α遮断によるIL-4 / IL-13シグナル伝達の阻害は、疾患の活動性を有意かつ次第に改善し、炎症の細胞/分子学的皮膚マーカーや2型炎症の全身的な測定値を低下させ、ADに関連した表皮異常を逆転させた。
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結局、何がわかった?
✅ デュピルマブは、成人の中等症以上のアトピー性皮膚炎に対して16週間で臨床症状を改善した。
✅ 2型由来の血清バイオマーカーを有意に抑制し、皮膚バリアや皮膚過形成、皮膚分化、脂質代謝因子も有意に改善した。
デュピルマブは2型炎症(アレルギー性炎症)を改善させる結果、皮膚機能も改善させるようだ。
■ IL4/IL13は、アレルギー性のサイトカインであり、上昇することでさらに皮膚バリアを低下させることが報告されています。
■ デュピルマブで皮膚バリア自体も改善してくるのは、その影響を断つためでしょう。
■ もちろん、デュピルマブは高価な薬ですので長期間使用するのは難しいでしょうし、小児適応は今のところありません。
■ しかし、小児に関しても最近、症例集積研究もみかけるようになりました(Treister AD, Lio PA. Long-term off-label dupilumab in pediatric atopic dermatitis: A case series. Pediatr Dermatol. 2018. PMID: 30338546) 。
今日のまとめ!
✅ デュピルマブは、アレルギー性炎症を抑える結果、皮膚の機能も改善させるようだ。