IgG(4)抗体は、アレルギーをブロックする抗体として知られています。
■ IgE抗体は即時型反応を起こす抗体です。
■ 一方で、IgG(4)抗体はブロッキング抗体として、アレルギーを「防御する」抗体として知られています。
■ そして妊娠中のIgG(4)抗体は児に移行することもまたよく知られていますが、その移行により児のアレルギーを予防する可能性が報告されています。
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Lupinek C, et al. Maternal allergen-specific IgG may protect the child against allergic sensitization. J Allergy Clin Immunol 2019. [Epub ahead of print] PMID: 30685457
出生コホート試験に参加した99家族において、妊娠中・臍帯血中のアレルゲン特異的IgG抗体と児のアレルゲン感作の関連を検討した。
背景
■ 出生コホートにおいてマイクロアレイで検出されるアレルゲン特異的IgE反応の分析は、小児における特異的IgE反応の進化に関する詳細な情報を提供した。
■ そして、アレルゲン特異的IgG抗体価の乳児期早期の発達に関する高い分析力のあるデータが必要である。
目的
■ 母親のアレルゲン特異的IgGが児のIgE感作から保護しうるどうかを調べる目的で、妊娠中の母、臍帯血サンプル、母乳、乳児のマイクロアレイで検出されるアレルゲンに対するIgG反応性を分析する。
方法
■ スウェーデンの出生コホートであるALADDINにおける99家族において、妊娠第3期中の母からの血漿サンプル、臍帯血、出産後2ヶ月に採取した母乳、生後6、12、60ヶ月齢の児からの血漿サンプルのマイクロアレイアレルゲン164種類に対するIgG反応性について分析した(ImmunoCAP ISAC technology)。
■ マイクロアレイで検出されるアレルゲンに対するIgE感作は5歳児で決定された。
結果
■ 母、臍帯血、母乳におけるアレルゲン特異的IgG反応性プロファイルは強く相関した。
■ 母のアレルゲン特異的IgGは、生後6ヶ月時に一部の小児で維持されていた。
■ 児のアレルゲン特異的IgG産生は生後6ヶ月で発達し、アレルゲン曝露を反映していた。
■ 5歳でアレルゲンに対してIgE感作された児は、感作されていない児よりもアレルゲン特異的IgG抗体価が有意に高かった。
■ 試験されたアレルゲン164種類のアレルゲンすべてについて、アレルゲンに対する特異的血漿IgG抗体価高値(> 30 ISU)である母からの児は、5歳でそのアレルゲンに対するIgE感作を認めなかった。
結論
■ これは、乳児期における、母とその児における分子によるIgG認識プロファイルに関する初めての詳細な分析である。
■ 母の血漿、母乳中、臍帯血中のアレルゲン特異的IgG反応性高値は、5歳におけるアレルギー感作から保護するようにみえた。
臨床的意義
■ 妊娠第3期と臍帯血中の母におけるアレルゲン特異的IgG高値は、児におけるアレルギー感作に対して防御するように思われる。
■ この知見はアレルギー予防に影響する。
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結局、何がわかった?
✅ アレルゲンに対する特異的血漿IgG抗体価高値(> 30 ISU)である母からの児は、5歳でそのアレルゲンに対するIgE感作を認めなかった。
ブロッキング抗体の移行で、児のアレルギー感作を予防する?
■ やや規模の小さいコホート試験ですので、まだ結論を急ぐことはできないかもしれませんが、アレルギー予防に有用な知見かもしれません。
■ これは、児のアレルギーが母のせいだという意味ではありません。予防策として活用される可能性があります。
■ 一方、「除去食」は食物特異的なIgG(4)抗体を減らしてしまう可能性が指摘できます。
■ 一部の医療機関で、IgG検査による除去の指導が行われています。しかしその指導はブロッキング抗体をみて(むしろ防御する抗体であるのに)除去指導をするようなものかもしれません。
■ 少なくとも、現状ではIgG抗体を網羅的に検査をして除去指導をすることは推奨されていません。
今日のまとめ!
✅ 妊娠中の母のアレルゲン特異的IgG抗体は、児のIgE感作を低下させるかもしれない。