経口免疫療法後に中断すると食べられなくなる群は、IgE抗体価が高値である

経口免疫療法の摂取できるようになった際の限界とその定義。

■ 食物アレルギーが年齢が高くなるまでキャリーオーバーした場合に、経口免疫療法が試みられることがあります。

■ 経口免疫療法(oral immunotherapy ;OIT)とは、少しずつアレルゲンを摂取していき、寛容を誘導するという治療ですが、現在のところリスクがあるために標準治療ではありません。

■ さらに、OITは経口摂取を中断した場合にその維持が困難になることが示唆されており、脱感作(摂取していれば維持可能)、耐性(摂取を自由にしてよい)、SU (sustained unresponsiveness; その中間)という概念を知って置かなければ混乱します。

 

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Escudero C, et al. Early sustained unresponsiveness after short‐course egg oral immunotherapy: a randomized controlled study in egg‐allergic children. Clinical & Experimental Allergy 2015; 45:1833-43.

5〜17歳の卵アレルギー児61人をランダム化し、摂取できるようになった群が中断後に摂取できなくなる要因を調査した。

背景

■ 短期間の治療後に治療を中止した後にsustained unresponsiveness(SU;持続的な無反応)を誘導する卵経口免疫療法(egg oral immunotherapy; egg-OIT)の可能性を評価した研究はない。

 

目的

■ SUを誘導する際の短期間の卵OITの有効性を評価した。

 

方法

乾燥卵白(egg white; EW)に対する二重盲検プラセボ対照食物負荷試験(double‐blind placebo‐controlled food challenge; DBPCFC)を受けた5〜17歳の卵アレルギー児61人に対し、卵OITを受けた後に、十分な加熱をしていない卵を維持量として3ヶ月間48時間ごとに摂取する群(OITG群)4ヶ月間卵を除去した群(対照群; CG群)にランダム化した。

■ さらに卵OITを完了した児は1ヶ月間卵を除去した。

■ 4ヵ月後、両群はDBPCFCを受けた。

■ この負荷試験をパスしたOITG群は食事に卵を自由に加えるように指示された。

■ 免疫マーカーは様々な時点で調査された。

論文から引用。負荷プロトコール。

 

結果

OITG群の93%(30人中28人)が中央値32.5日で脱感作された(IQR 14日)

4ヵ月後、CG群の31人中1人(3%)とOITG群の30人中11人(37%)(95%CI 14〜51%; P = 0.003)ががDBPCFCをパスし、さらにそれらすべてが36ヵ月後にも卵を摂取していた。

■ EW、OVA、OVMに対する皮膚試験結果およびOVA特異的IgE(sIgE)抗体価の低下が4ヵ月後のOITG群で観察された(P = 0.001)。

■ 4ヵ月後にDBPCFCにパスしたOITG群の児の卵除去食の、試験開始前のEW特異的IgE抗体価、OVA特異的IgE抗体価、OVM特異的IgE抗体価は、パスしなかった児よりも低値だった。

■ EW特異的IgE抗体価とOVM特異的IgE抗体価は、4ヵ月時点でDBPCFCの結果を予測する上で最良の診断性能を示した。

最適なEW-sIgEカットオフ値として、7.1 kU / Lを超える抗体価ではDBPCFCをパスできない可能性が90%あることが示された。

 

結論

■ これは、3ヶ月間の卵OITプロトコルによるsustained unresponsiveness(SU)の最初の実証である。

ほぼすべての治療対象が脱感作され、37%がSUを達成した。

治療終了時のEW特異的IgE抗体価は、SUを予測した。

■ このプロトコルは、卵アレルギー児に対するOITの新しいアプローチを示している。

 

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結局、何がわかった?

 ✅ 卵経口免疫療法により93%(30人中28人)が脱感作され、1ヶ月の中断をはさむと30人中11人(37%)が摂取可能を維持した。

 ✅ プラセボ群は4ヶ月の経過観察で31人中1人(3%)のみしか摂取できていなかった。

 ✅ 4ヶ月の介入で摂取できていた群は、48時間ごとに継続して卵料理を摂取継続していると36ヶ月後も全員卵の耐性は維持された。

 ✅ 1ヶ月中断して食べられなくなった群は卵白・オボムコイド特異的IgE抗体価が有意に高く、卵白IgE抗体価が7.1kU/Lをこえていると90%がたべられなくなっていた。

 

1日おきで経口摂取を継続していると、卵の耐性が維持できるようだ。一方で卵白特異的IgE抗体価高値の場合は、中断すると多くは耐性を失う。

■ この研究では、初期導入として「急速免疫療法」の手法が取られているため、初期導入期間が短期間になっています。

■ 現在は急速免疫療法はリスクがクローズアップされ、あまり行われなくなっている印象があります(短期間で摂取できるようになるという意味で全否定するような方法でもありません)。

■ もし外来で、卵を摂取していて食べられるようになっても、まだ特異的IgE抗体価が高値であれば摂取を中断しないように注意していく必要があるでしょう。

 

今日のまとめ!

 ✅ 卵経口免疫療法を中断した場合に摂取できなくなる群は特異的IgE抗体価が高い。

 

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