スポンサーリンク

食物除去をすることは、両刃の剣でもあります。

■ 食物アレルギーに対する除去食はひとつの対応方法です。しかし、安易な除去食はむしろ食物アレルギーを顕在化させる可能性が示唆されています。

■ そのテーマでの症例集積研究をご紹介します。

 

Nachshon L, et al. Food allergy to previously tolerated foods: Course and patient characteristics. Ann Allergy Asthma Immunol 2018; 121:77-81.e1.

以前に安全に摂取できた食物に対しアレルギーの主訴のある30人の特徴を調査した。

背景

■ 以前に安全に摂取できた食物タンパク質に対する食物アレルギー(food allergy ; FA)の獲得は、免疫グロブリンE(IgE)依存性アレルギー疾患の稀な症状である。

 

目的

■ 我々は、以前耐性を持っていた食物の除去理由と期間といった、以前に耐性であったFA(FA to previously tolerated foods; FA-PTF)を発症した患者を特徴づけようとした。

 

方法

以前に問題なく摂取できた食物に対するFAの主訴がある患者30人を評価した。

■ 病歴が得られ、皮膚プリックテストと段階的経口食物負荷試験 (oral food challenges; OFC)が行われた。

■ FA-PTFによる死亡例が、医師から報告された。

 

結果

患者30人うちの22人(1.2〜50歳)が、乳 17人、卵 2人、ピーナッツ 3人に対する経口食物負荷試験 (OFC)により以前に耐性であった食物に対する食物アレルギー(FA-PTF)と診断された。

■ FA-PTFのあった患者の1人は、乳に対し致命的な反応を示した。

■ アナフィラキシー反応は、FA-PT患者23人のうち12人(52%)で報告された。

■ 8人は複数のエピソードを経験していた。

アトピー性皮膚炎は患者の52%(23人中12人)で診断され、12人中8人は重症だった。

■ 全体的に、23人中18人(78%)が、アレルギー的背景を顕著に示していた。

アレルギー症状が出現する前に、16人(70%)が除去食を開始しており、うち12人は医療従事者からのアドバイスを受けていた

■ FA-PTFのある4人においては、食物蛋白質に対する反応は、継続した摂取中に明らかになった。

 

結論

■ 以前に耐性をもっていた食物に対する食物アレルギーは、主にアレルギー体質の患者の除去食後に発症する。

■ アナフィラキシー反応は一般的である。

■ 医療従事者は、耐性をもつ食物の除去を推奨する前に、これらのリスクを考慮する必要がある。

 

結局、何がわかった?

 ✅ 以前に摂取できていた食物に対し食物アレルギーを示すようになった30人中22人が負荷試験で食物アレルギーと診断された。

 ✅ 22人中16人(70%)がアレルギー症状が出現する前に除去食を開始しており、うち12人は医療従事者からのアドバイスを受けていた。

 

 

除去食を開始する前に、「除去食がかえって食物アレルギーを発症させる可能性がある」ことに配慮しなければなりません。

特異的IgE抗体価パネル検査の弊害

■ よく経験されるのが、パネル検査と呼ばれる多項目をセット検査できるIgE抗体価検査(view39やMAST36といった名称があります)により除去食の指示を受け、かえって食べられなくなってしまうという場合です。

■ 少なくとも食物アレルギー診療において、MAST36やview39といった検査は、使いどころがかなり限定されます。

■ たとえば、MAST36検査で、卵白が陽性だったとしましょう。特異的IgE抗体価は、陽性だから食べて陽性ではありませんし、IgE抗体価陰性だから症状が出ない、そういう検査ではありません。陰性であれば食べて陰性である可能性が高い・陽性であれば高値であるほど食べて陽性である可能性が高いという、どこまで行ってもグレーの検査です。

■ そこで、特異的IgE抗体価は、その検査結果をもとに過去の報告のデータにあてはめて、症状が陽性である可能性を予測します。

■ しかし、先行研究で多いImmunoCAPのデータと、view39やMAST36の結果は大きく異なります換算も基本的にできません

■ すなわち、これらパネル検査は「陽性か陰性か」までしかわからず、それをそのまま臨床に使えないのです。

■ 最も大きな問題点は、「食べられているのに血液検査陽性だから、食べるのを控えましょう」という指示であることが、この研究結果でもお分かりになるかと思います。

 

食べられているのに除去を指示することの弊害

■ 食物の寛容(体が受け入れること)は、特にあとから獲得した場合は特に、除去食をすることで簡単に失われます。

■ そもそも食物特異的IgE抗体価の検査は、網羅的(よく考えずにとにかく沢山)な検査は勧められていません

■ 例えば、米国小児科学会により掲げられた「Choosing Wisely (より賢い選択)」では、「Don’t perform screening panels for food allergies without previous consideration of medical history. (病歴を考慮しない食物アレルギーのスクリーニングパネルを実施してはならない)」と明記されています。

■ 病歴をきちんと聴取し「摂取できている食物に対するIgE検査はしてはいけない」のです。パネル検査は実施時点で「賢くない」方法ともいえるでしょう。

 

特異的IgG(4)抗体価の測定による弊害

■ さらに、IgE抗体ではなくIgG抗体を目安に除去食を指導する医師・検査機関すら存在します(IgEとIgG(4)は別物です)。

■ 最近、HAL先生がその点を問題提起されていました。

■ 食物アレルギーに対するIgG抗体は、「防御抗体」としてむしろ耐性の指標になるくらいで、「一般には」除去の指標にはなりません。

■ IgG抗体は、たとえば経口免疫療法の「耐性(食べられるようになっている)」の目安として「研究目的で」つかわれます。高いほうが「耐性を獲得している可能性が高い」とも言い換えられます。

Akdis M, Akdis CA. Mechanisms of allergen-specific immunotherapy: multiple suppressor factors at work in immune tolerance to allergens. J Allergy Clin Immunol 2014; 133:621-31.から引用。

下図のように、「治療が進むほど」「IgG4は上昇する」。

 

■ 食物特異的IgG(4)のイメージを伝えるのは難しいのですが、例を示してみます。

■ 患者さんが「風疹の抗体がついているかどうか調べてください」と病院にいって検査をし、医師から「抗体がついていますね。大丈夫ですね。」という答えを聞いて安心するといったシチュエーションを思い浮かべてみましょう。良くあるケースではないかと思いますし、みなさんも良く納得できる場面と思います。

■ 食物アレルギーにおけるIgG4検査に基づく除去指導は、本来は「卵に耐性がある抗体がついていますね。体が受け入れている可能性が高いですよ」というべきところを「卵にアレルギーがありますね。除去してください」と全く逆の指導をしていることになるのです。

 

■ なお、上記で「一般には」としたのは、好酸球食道炎や過敏性腸炎における除去食に有用性は報告されており、一部IgG4(生検が主・一部血液検査でも)が病状と相関がある「かもしれない」という報告もあるからです。しかし、やはり現状では、血液検査によるIgG4で除去食を指導するのはやはり問題であることにはかわりありません。

 

除去食自体は、選択されうる手段です。しかし、目安とできない検査を自費で行った上で除去する方法が正しいでしょうか?

■ 除去食自体を否定するつもりはありません。必要な場合は治療選択肢にあがる方法でしょう。

■ しかし、鑑別に不要な検査を行ったうえ、さらには不要な除去を行い、その上死亡例まで起こしていることを良く考える必要があります

■ 医療において100%の選択肢をみつけることは簡単ではなく、できるかぎり白に近いグレーを選ぶために様々な方策を行います。検査はその手段のひとつにすぎません。

■ ただし、少なくとも現状ではIgG4抗体のパネル検査による除去食指導は限りなく黒に近いグレーといえましょう。

■ 一方で、もしIgG4検査に基づいた除去により多くの方が実際に良くなったという報告が多いのであれば、有用性があるのかどうかを研究として検討を進める必要性があります。

■ そのためには、高額な検査を行い除去食を指導することは優先されません。現実に健康被害も起こっているわけですから。「研究目的で」行っていく必要性があるでしょう。

■ 利益と害、どちらが高いのかを検討するべきということです。

 

今日のまとめ!

 ✅ それまで摂取できていた食物に対し食物アレルギーを獲得した22人中16人(70%)がアレルギー症状が出現する前に除去食を開始しており、うち12人は医療従事者からのアドバイスを受けていた。

 

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事