以下、論文紹介と解説です。

Senti G, et al. Intralymphatic immunotherapy for cat allergy induces tolerance after only 3 injections. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2012; 129:1290-6.

ネコふけ組換えアレルゲンFel d1を使用した経リンパ節免疫療法を3回行い、有効性を確認した。

背景

■ 皮下アレルゲン特異的免疫療法は、しばしばアレルギーの副作用を引き起こし、3~5年間で30~80回の注射を必要とする。

 

目的

リンパ内アレルゲン投与(intralymphatic immunotherapy; ILIT)を用いて、MHCクラスII経路アレルゲンを標的化することにより免疫療法の改善を試みた。

 

方法

■ 主要ネコふけ組換えアレルゲンFel d1を転座配列(translocation sequence; TAT)およびヒトインバリアント鎖の一部に融合させ、モジュール型抗原輸送体(modular antigen transporter; MAT)ワクチン(MAT-Fel d 1)を作成した。

■ そしてランダム化二重盲検試験により、アレルギー患者(ClinicalTrials.govNCT00718679)を対象に、MAT-Fel d1(+ミョウバン)によるILITとプラセボ(+ミョウバン食塩水)によるILITが比較された。

 

結果

■ MAT‐Fel d1によるILITは有害事象を誘発しなかった。

2か月以内に3回のプラセボ注射をした後の鼻症状の耐性(鼻へのネコふけの誘発負荷で確認)増加は3倍未満だったが、MAT‐Fel d1による3回のリンパ内注射は鼻症状の耐性を74倍増加させた(P<.001 vs プラセボ)

MAT‐Fel d1を用いたILITは、調節性T細胞の反応を刺激し(P=0.026 vs プラセボ)、ネコふけ特異的 IgG(4)抗体価5.66倍(P=0.003)に増加させた。

■ IgG (4)への反応はIL‐10の産生と正に相関した(P<.001)。

 

結論

■ MAT-Fel d1を用いた最初のヒトでの臨床試験において、3回の注射は安全であり、アレルゲンに対する耐性を誘導した。

 

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経リンパ節アレルゲン免疫療法は、臨床研究結果が徐々に報告されつつあります。

■ かなり有用な印象のある治療法ではありますが、リンパ節に直接注射しなければなりませんので、一定のリスクはあるでしょう。

■ 一般化するためのハードルは、舌下免疫療法の比ではないでしょう。

■ とはいえ、もともと治療が困難なネコアレルギーに対する治療が3回のリンパ節注射で症状が軽減されるというのは魅力的ではあります。

■ 食物アレルギーや花粉症に対する報告もではじめてきていますし、安全性を含めて今後の動向を注目しています。

 

今日のまとめ!

 ✅ ネコふけによる経リンパ節アレルゲン免疫療法の有効性の初報告をご紹介した。

 

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