以下、論文紹介と解説です。
Almqvist C, et al. School as a risk environment for children allergic to cats and a site for transfer of cat allergen to homes. J Allergy Clin Immunol 1999; 103:1012-7.
ネコを飼育している家庭としていない家庭で、ネコアレルゲン(Fel d1)の空気中の濃度を調査し、学校や家庭におけるアレルゲンの拡散経路として衣服を検討した。
背景
■ 多くの子どもは毛のあるペットにアレルギーがあり、ペットとの直接の接触を避けている。
■ しかし学校は、ペットのアレルゲンへの間接的曝露の場所であるかもしれず、アレルギー疾患の症状を誘発または持続させる可能性がある。
目的
■ ネコを飼育している家庭としていない家庭で、ネコアレルゲン(Fel d1)の空気中の濃度を調査し、学校や家庭におけるアレルゲンの拡散経路として衣服を検討することを目的とした。
方法
■ (1)ネコの飼育率が高い(25%超)または低い(10%未満)クラスに通う子ども、および (2) ネコのいる、またはネコのいない家庭から、個々のサンプラーを用いて空気中のネコアレルゲンを採取した。
■ そして、最近開発された増幅ELISA分析法(ペットのいない環境での低濃度の空気中のネコアレルゲンを検出する)を用いた。
■ 衣服とマットレスからハウスダストのサンプルを採取した。
結果
■ ネコを飼っている子どもが多いクラスと少ないクラスでは、空気中のネコアレルゲンの中央値に5倍の差があった( (2.94 vs 0.59 ng/m3; P <.001)。
■ ネコを飼っている子どもが多いクラスの空気中のネコアレルゲン濃度の中央値は、ネコを飼っていない家庭より有意に高かったが (P <.001)、ネコがいる家庭よりは低かった(P <.001)。
■ ネコを飼っていない子どもの衣服のアレルゲン量は、登校日の後に増加した(P <.001)。
■ ネコを飼っている子どもが多いクラスにおける、ネコを飼っていない子どもは、マットレスにくっついているネコアレルゲン量が多くなった(P=.01)。
結論
■ この結果は、学校でのネコアレルゲンへの有意な曝露を示す。
■ アレルゲンは、ネコのいる家から教室まで衣類を通して拡散する。
■ そこではアレルゲンが空気中に拡散し、ネコのいない子どもの衣服を汚染する。
■ ネコを飼っていない家のアレルゲン濃度は、学校でのネコアレルゲンへの曝露と相関する。
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ネコアレルゲンは、衣服を通して拡散する。もちろん、ネコを飼っている家庭よりは、持ち込まれたアレルゲン量の方が少ない。
■ 何度かお話ししてきましたが、私は、ペットの利点も大きいことはよく理解しているつもりです。
■ ですので、ペットを飼っている家庭で、お子さんがアトピー性皮膚炎や喘息を発症した時には、共存から考えることにしています。
■ しかし、重篤なネコアレルギーのお子さんの場合は、学校に持ち込まれたネコアレルゲンにも配慮する必要があるのか…と、この論文をみて困難さを感じました。
■ ネコに関しては、『飼育していないはずの家庭』でも、『アトピー性皮膚炎を発症した場合』や『実家で飼育している場合』にはネコに感作されていることを良く経験します。
■ なおこれは、ネコを飼育している方と、飼育していない方の対立を助長したいわけではなく、『日常的にあるアレルゲンなのだ』ということを考えたいということです。
今日のまとめ!
✅ ネコアレルゲンは衣服を介して拡散しているようだ。