Chew GL, et al. Monthly measurements of indoor allergens and the influence of housing type in a northeastern US city. Allergy 1999; 54:1058-66.
環境抗原の季節変動・家屋による違い。
■ 今回は、かなり古い報告です。こういうアレルゲン量を調査した研究は1990年代に実施されたものが多いので、今でも有用です。
■ 特に、ネコ抗原の量に関し、普段の診療で例として挙げることの多い報告です。
ボストンにおけるチリダニ(Der f 1およびDer p 1)、ネコ(Fel d 1)およびゴキブリ(Bla g 1)アレルゲンの季節変動・家屋の種類による違いを調査した。
背景
■ ボストンにおけるチリダニ(Der f 1およびDer p 1)、ネコ(Fel d 1)およびゴキブリ(Bla g 1)アレルゲンの季節変動を調べ、他の共変量で調整した。
■ 米国の様々な地理的地域におけるの屋内アレルゲン濃度の季節的パターンに関し、限られたデータしか利用できていない。
■ 家庭内におけるアレルゲンの季節変動を理解することは、疫学的・臨床的に重要である。
方法
■ 1995年6月から1996年6月まで、毎月、20家庭における、ベッド・ベッドルームの床・キッチンからハウスダストのサンプルを採取した。
■ 室内温度を毎月測定し、相対湿度と絶対湿度の計算に使用し、毎月の家庭の特徴に関するアンケートを、各家庭で実施した。
■ ハウスダストのサンプルは、ELISAによって検定された。
結果
■ 秋に、ベッドとベッドルームの床のDer f 1とDer p 1は、ピークに達した。
論文から引用。Der f 1とDer p 1濃度。
■ 冬と春に、Fel d 1はピークに達した。
論文から引用。Fel d 1濃度。
■ 夏にはBla 1が最も高くなった。
論文から引用。Bla g 1濃度。
■ チリダニアレルゲン濃度は、春よりも秋に1.9-2.4倍高くなったが、ベッドでのチリダニ量は一般家屋の方がマンションよりも19~31倍高かった。
■ ベッドにおけるFel d 1は夏より春に2.4倍高かったが、ネコのいる家庭ではネコのいない家より224倍高かった。
■ 同様に、キッチンのBla g 1レベルは夏が冬より2.1倍高かったが、マンションでは一般家屋よりも5倍高かった。
結論
■ ハウスダストの採取する季節は、米国北東部の家庭内チリダニ、ネコ、ゴキブリアレルゲンの違いの原因となる。
■ しかし、これらの屋内アレルゲンの季節的変動以上に、住居の種類や猫の飼育をするという影響が大きかった。
結局、何がわかった?
✅チリダニアレルゲン濃度は、春よりも秋に1.9-2.4倍高くなったが、ベッドでのチリダニ量は一般家屋の方がマンションよりも19~31倍高かった。
✅ ベッドにおけるFel d 1は夏より春に2.4倍高かったが、ネコのいる家庭ではネコのいない家より224倍高かった。
✅キッチンのBla g 1レベルは夏が冬より2.1倍高かったが、マンションでは一般家屋よりも5倍高かった。
環境抗原は季節変動があり、家屋の種類により違いがある。
■ 海外のアレルゲン量の検討が、そのまま本邦で臨床応用できるわけではありません。また、本邦ではチリダニアレルゲン(Der f 1/Der p 1)が多い環境であり、ゴキブリアレルゲン(Bla g 1)が少ない環境です。一方でネコに関しては、飼っていると200倍以上に増えることは確かと言えましょう。
■ アレルゲンが少ない環境では環境整備は有効性が低いでしょう。一方で、抗原量が多い環境では有効性が発揮されるかもしれません。
■ これは、ダニが少ない環境では環境整備の効果が不十分であったというランダム化比較試験や、、、
気管支喘息に対する環境整備は、治療薬を減少させるか?: ランダム化比較試験
■ ゴキブリが多い環境では環境整備の有効性があるという報告から予想することが出来ます。
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今日のまとめ!
✅ チリダニアレルゲンは春よりも秋に高く、一般家屋の方がマンションよりも高い。
✅ ネコアレルゲンは夏より春に高く、ネコのいる家庭ではネコのいない家より224倍高い。
✅ キッチンのゴキブリアレルゲンは夏が冬より高く、マンションでは一般家屋よりも高かった。