Mitre E, et al. Association Between Use of Acid-Suppressive Medications and Antibiotics During Infancy and Allergic Diseases in Early Childhood. JAMA pediatrics 2018: e180315-e. [Epub ahead of print]
妊娠中・乳児期の抗生剤使用が、その後のアレルギー疾患発症リスクに影響することが示唆されている。
■ 妊娠中・乳児期の抗生剤使用が、その後のアレルギー疾患の発症リスクになることはいくつかの報告をご紹介してきました。
■ 例えば、妊娠期間を通して抗生剤投与が使用されると、子どもの1歳半時点のアトピー性皮膚炎の発症リスクを1.45倍になるというコホート試験の結果があります。
■ また、乳児期の抗生剤使用に関しても、喘息、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーの発症リスクをあげるかもしれないという報告があります。
■ 今回、JAMAの姉妹紙に発表された、乳児期の抗生剤や制酸剤が、その後のアレルギー疾患発症リスクになるかどうかを検討した報告をご紹介いたします。
米国の保険データベースからの児792130人に関して、H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬、抗生物質の処方歴がある場合に、その後のアレルギー疾患の発症リスクが高いかを検討した。
重要性
■ アレルギー疾患は、小児期に一般的である。
■ 制酸薬や抗生物質といった、微生物を変更する可能性のある薬物への早期曝露は、アレルギーの発症可能性に影響するかもしれない。
目的
■ 乳児期の生後6ヶ月までの制酸剤や抗生物質の使用と幼児期のアレルギー疾患の発症との関連性があるかどうかを判断する。
試験デザイン、セッティング、参加者
■ 2001年10月1日から2013年9月30日までに、生後35日以内から少なくとも1歳までに参加したMilitary Health Systemデータベースに出生医療記録を持つ国防総省のTRICARE受益者であった児792130人において、後ろ向きコホート研究が行われた。
■ 出生時に7日以上の入院歴がある、または生後6ヶ月以内にアレルギー状態があると診断された児は、研究から除外された。
■ データ分析は2015年4月15日から2018年1月4日まで実施された。
曝露
■ 曝露は、H2受容体拮抗薬(H2RA)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、抗生物質の処方歴があるものとして定義された。
主要な結果と検査
■ 主な結果は、食物アレルギー、アナフィラキシー、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹、接触性皮膚炎、薬物アレルギー、他のアレルギーの存在と定義するアレルギー疾患とされた。
結果
■ 分析された児 792130人(女児 395215人[49.9%])のうち、生後6ヶ月までにH2RAの投与歴 60209人(7.6%)、PPIの投与歴 13687人(1.7%)、抗生物質の投与歴 13178人(16.6%)が投与されていた。
■ 各小児のデータは、中央値4.6歳で入手された。
■ H2RA/PPIを処方された児の調整ハザード比(aHR)は、食物アレルギー 2.18(95%CI 2.04-2.33)/ 2.59(95%CI 2.25-3.00)、薬物アレルギー 1.70(95%CI 1.60-1.80)/1.84(95%CI、1.56-2.17)、アナフィラキシー 1.51(95%CI 1.38-1.66)/ 1.45(95%CI、1.22-1.73)、アレルギー性鼻炎 1.50(95%CI 1.46-1.54)/ 1.44(95%CI 1.36-1.52)、喘息 1.25(95%CI 1.21-1.29)/1.41(95%CI 1.31-1.52)だった。
■ 生後6ヶ月までの抗生物質処方後のaHRは、喘息 2.09(95%CI 2.05-2.13)、アレルギー性鼻炎 1.75(95%CI、1.72-1.78)、アナフィラキシー 1.51(95%CI 1.38-1.66) 、アレルギー性結膜炎 1.42(95%CI 1.34-1.50)だった。
結論と妥当性
■ この研究では、乳児期の最初の6ヶ月間における制酸剤や抗生物質の使用とアレルギー性疾患の発症との関連性が見出された。
■ 乳児期には、臨床的に明らかな効果がある場合にのみ、制酸剤と抗生物質を使用すべきである。
結局、何がわかった?
✅ 生後6ヶ月までにH2拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬を使用した場合、その後のアレルギー発症リスクが、食物アレルギー 2.18倍/ 2.59倍、薬物アレルギー 1.70倍/1.84倍、アナフィラキシー 1.51倍/ 1.45倍、アレルギー性鼻炎 1.50倍/ 1.44倍、喘息 1.25倍/1.41倍になると推定された。
✅ 生後6ヶ月までに抗生剤を使用した場合、その後のアレルギー発症リスクが、喘息 2.09倍、アレルギー性鼻炎 1.75倍、アナフィラキシー 1.51倍 、アレルギー性結膜炎 1.42倍になると推定された。
乳児期の制酸剤や抗生物質は、十分検討して処方するべきとされています。
制酸剤の先行研究。
■ 制酸剤とアレルギー疾患発症リスクの影響に関しては、先行研究があります。
Anti‐acid medication as a risk factor for food allergy
■ 最近発表されたレビューでも、アレルギーを増強するリスクのひとつにあげられています。
Factors augmenting allergic reactions
抗生剤使用に関して。
■ 感染症が重篤する場合も少なくない乳児期の抗生剤使用は、使用するべき場合は使用するべきですが、特に、「悪化が心配されるから」という理由での抗生剤の濫用は厳に慎むべきでしょう。
■ アレルギー疾患だけでなく、肥厚性幽門狭窄症・コリック(黄昏泣き)、肥満のリスクになるという報告もご紹介してきました。
今日のまとめ!
✅生後6ヶ月までの制酸剤や抗生剤の使用は、その後のアレルギー発症リスクを上昇させるかもしれない。