以下、論文紹介と解説です。

Pedersen L, et al. Less skin irritation from alcohol‐based disinfectant than from detergent used for hand disinfection. British Journal of Dermatology 2005; 153:1142-6.

健康ボランティア17人の上腕内側・前腕部に対し、洗浄剤を使用する群、消毒剤を使用する群、洗浄剤と消毒剤を交互に使用する群(1日2回、10分毎に1時間)にわけ10日間使用して、視覚的スコアとTEWLを測定した。

背景

■ 正常な皮膚に使用されるアルコール系消毒剤の有用性が議論されている。

 

目的

■ 本研究の目的は、アルコール系消毒剤、洗浄剤、アルコール系消毒剤/洗浄剤を交互に10日間繰り返し曝露した場合の効果を比較することであり、評価には非侵襲的な検査を含めた。

■ また、4週間のインターバルを置いた後の、刺激を受けた皮膚の反応性を評価した。

 

材料と方法

■ 健康ボランティア17人の上腕内側および前腕部に対し、洗浄剤を使用する群、消毒剤を使用する群、洗浄剤と消毒剤を交互に使用する群(1日2回、10分毎に1時間)にわけた。

使用洗浄剤・消毒剤

洗剤(水、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウレス-8カルボン酸ナトリウム、ラウレス-7、glycereth‐2‐cocoate、グリセロール、PEG-4rapeseed‐amide、乳酸を含有する液体石鹸)。アルコール消毒剤(1.3%のグリセロール、5%v/vイソプロピルアルコール、78%v/vエタノールを含む)。

■ 対照部位を含めた。

■ 4週間後にSLSパッチを各部位に塗布した。

■ 刺激性の反応を視覚的スコアで定量化し、1日目、5日目、11日目、38日目、40日目に経皮水分蒸散量(transepidermal water loss ; TEWL)と皮膚色調を測定した。

 

結果

5日目には、洗浄剤群は、消毒剤単独群・消毒剤と洗浄剤交互群のいずれかよりも視覚スコアが高くなった(P <0.05)

■ 11 日目には、洗浄剤群、消毒剤と洗浄剤交互群は、消毒剤群よりもスコアが高くなった(P < 0.05)。

洗浄剤群の刺激性反応は、5日目・11日目のTEWLの測定により、消毒剤単独・消毒剤と洗浄剤の併用群とを比較しての増加したが(P < 0.001)、色調定では有意差は認められなかった

論文から引用。TEWLの比較。

■ 4週間後、色調測定で評価すると、対照部位・洗浄剤使用部位と比較して、消毒剤使用部位ではSLSパッチへの反応が有意に少なく、TEWLについても同様の傾向が見られたが、統計的には有意ではなかった。

 

結論

アルコールベースの消毒剤は、洗浄剤の使用よりも目に見える皮膚の刺激が少なく、皮膚バリアの破壊が少なかった

■ 洗浄剤と消毒剤を交互に使用した場合、洗浄剤を使用した場合よりも刺激性が少なく、刺激性物質間の相互作用の可能性は示されなかった。

■ 4週間後には、4週間前に消毒剤を使用した皮膚部位での皮膚反応性は低下する傾向があった。

 

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洗浄剤よりも、アルコール消毒剤のほうが手を傷めないのかもしれない。

■ 以前は、アルコールのほうが皮膚を傷めるものかと思っていましたが、洗浄剤の方が悪化に関係し、すでに先行研究もあり、おおくはアルコール消毒剤に軍配をあげています。

■ もちろん、洗浄剤の種類によっても、皮膚の刺激は異なるでしょうし、手を洗浄したあとの保湿剤によっても結果が異なりそうです(アルコール消毒剤の方には『グリセロール(保湿成分)』が含まれているのも影響してそうな印象です)

■ そして、さすがに10分ごとに1時間の洗浄…ちょっと一般的な使用としては多いですよね(医療者は除き…)。

■ 手指消毒が多くなっている昨今なので、やはりアルコール消毒剤もうまく使い、洗浄剤はきちんと流してから保湿剤を塗るのがいいのかなあと考えました。

 

 

今日のまとめ!

 ✅ 消毒は、アルコール消毒剤のほうが手を傷めないのかもしれない(ただし、この研究はアルコール消毒剤に保湿成分が含有されている)。

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