以下、論文紹介と解説です。
Salam RA, et al. Emollient therapy for preterm newborn infants–evidence from the developing world. BMC Public Health 2013; 13:S31.
2012 年 12 月までに発表された、低・中所得国における早産児に対し保湿剤(エモリエント)を使用した効果(死亡・感染・体重増加)をみた研究のシステマティックレビューを実施した。
前書き
■ 保湿剤(エモリエント)の使用は、多くの低・中所得国(low and middle-income countries; LMICs)で伝統的な新生児ケアの方法として広く行われており、早産児の感染症とそれに伴う死亡率を減少させる可能性がある。
方法
■ 保湿剤外用療法の効果を報告した研究を特定するために、2012 年 12 月までに発表された文献を系統的にレビューした。
研究の基準は以下の通り。
早産児(妊娠37週未満)への保湿剤外用剤の予防的適用を評価した研究で、出生後96時間以内に開始し、その後少なくとも1週間は継続したものが含まれた。
保湿剤外用と日常的なスキンケア、または1種類のオイル外用(またはオイルの組み合わせ)と別のオイル(またはオイルの組み合わせ)を比較した研究が含まれた。
『aquaphor』の効果影響を検討している研究は、ほとんどの研究が先進国のセッティングで使用されているため、もしくは高収入国(High Income Countries; HIC)で実施された研究のため除外した。
■ 保湿剤外用療法の効果を推定するために、標準化された抽出とグレード分類のフォーマットを使用し、Child Health Epidemiology Reference Group(CHERG)の標準的なルールを適用した。
結果
■ 本レビューでは、7研究と 未発表の研究1件が含まれた。
■ 保湿剤外用療法は、新生児の死亡率を27%(RR 0.73; 95%CI 0.56~0.94)、院内感染を50%(RR 0.50; 95%CI 0.36~0.71)有意に減少させた。
論文から引用。死亡率が低下する。
論文から引用。院内感染率が低下する。
■ 体重(g)(MD 98.04; 95%CI 42.64~153.45)や体重増加(g/kg/日)(MD 1.57; 95%CI 0.79~2.36)は有意に改善したが、身長や頭囲は有意ではなかった。
論文から引用。体重の増加が改善する。
結論
■ 保湿剤外用療法は、早産児の体重増加を改善し、感染症リスクの低下、新生児死亡率の低下と関連しており、医療資源が少ない環境で実施するための有効な介入である可能性がある。
■ この介入の影響をさらに評価するためには、大規模な有効性試験が必要である。
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早産児に対する保湿剤(エモリエント)塗布の死亡率を下げる効果に関しては、セッティングでも差が出るために結論することはまだ難しいようだ。
■ 冒頭に、2004年のコクランシステマティックレビューでは、むしろ感染を増やす可能性があるという結果をご紹介しました。
■ その後、2016年に発表されたコクランシステマティックレビューでは、感染症や死亡率に対する有意差はなくなっており、『エモリエント療法が、高所得、中所得、低所得のセッティングで早産児の感染や死亡を防ぐというエビデンスは得られていない』という結論に変わっています(Cleminson J, McGuire W. Topical emollient for preventing infection in preterm infants. Cochrane Database Syst Rev 2016; 2016:Cd001150.)。
■ つまり、高所得国を中心にする場合と、低・中所得国を対象にする場合で、結果が変わってきそうです。
■ 現状では早産児に対する保湿剤(エモリエント)を使うかどうかは、医療のおかれたセッティングによって変わるため、結論を出すのはいまのところ難しそうです。
今日のまとめ!
✅ 低・中所得国で出生した早産児に対するエモリエント塗布は、死亡率・感染・体重増加に良い影響を与えることが示されたが、高所得国で同様の結果となるかは、わからない。