以下、論文紹介と解説です。

Vaillant L, Georgescou G, Rivollier C, Delarue A. Combined effects of glycerol and petrolatum in an emollient cream: A randomized, double-blind, crossover study in healthy volunteers with dry skin. Journal of Cosmetic Dermatology 2020; 19:1399-403.

ドライスキンのある健康ボランティア51人の前腕部に、1)エモリエント剤(基剤+グリセロール+ワセリン)、2)基剤のみ、3)基剤+グリセロール、4)基剤+ワセリンにランダム化し、TEWLと皮膚水分量を比較した。

背景

■ 角層は、皮膚の乾燥や外部からの侵入を防ぐためのバリアとして、生理的に重要な保護機能を果たしている。

■ エモリエントは、バリア機能と皮膚水分量を改善するためによく使用される。

 

目的

■ 本研究の主目的は,エモリエントであるV0034CRクリームとその有効成分による皮膚バリアの回復効果を評価することだった。

■ 副次的な目的は、各製品の保湿活性の評価と忍容性の評価だった。

■ なお、本試験は治療上の有用性を評価するためのものではなかった。

 

方法

■ このランダム化二重盲検4群間クロスオーバー臨床薬理試験では、ドライスキン(Kligmanスコア2もしくは3)の健康ボランティア51人の前腕部に、エモリエント効果の高いV0034CR,その基剤製剤単独、グリセロール・ワセリンを含む製剤を塗布した。

管理人注
各被験者の前腕部内側に、
エモリエントV0034CR(基剤+グリセロール+ワセリン)
基剤のみ
基剤+グリセロール、
基剤+ワセリン
の4つの製品をランダムに塗布

■ 塗布後12時間、経表皮水分蒸散量(TEWL)による皮膚透過性とコルネオメトリーによる皮膚水分量を連続的に測定した。

■ TEWLとコルネオメトリーの変化について、反復測定による分散分析を行った。

 

結果

V0034CRのエモリエント剤は、基剤(P = 0.0018)および基剤+グリセロール(P = 0.0001)と比較して、平均TEWLを有意に減少させ、基剤(P < 0.0001)や基剤+ワセリン(P < 0.0001)と比較して、コルネオメトリーの平均スコアを有意に増加させた

 

結論

■ エモリエントV0034CRは、ワセリン成分がTEWLの低下を伴う皮膚バリア機能を改善し、グリセロール成分が皮膚の保湿を改善するという複合的な効果を示した

 

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皮膚バリア機能と角質水分量の両方を考えながら、保湿剤を捉えていく必要があるかもしれない

■ 論文にも述べられているように、このまま治療につかえるかどうかはわかりませんが、ワセリンによる皮膚バリア機能保護と、保湿成分(ここではグリセロール)のあわせ技で効果をより上げることができるかもしれないという結果でした。

■ これからの冬場にむけて、保湿剤にワセリンも添加したり、基剤の性質を考えながら(ローションから軟膏や水中油製剤に変更など)処方を考えてもいいのかもしれません。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 皮膚バリア機能と角質水分量の両方を考えると、ワセリンと保湿成分の両方を考慮するといいのかもしれない

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