以下、論文紹介と解説です。

Kim BR, et al. Incidence and characteristics of norovirus-associated benign convulsions with mild gastroenteritis, in comparison with rotavirus ones. Brain and Development 2018; 40:699-706.

ノロウイルスによる軽症胃腸炎関連けいれん(CwG)とロタウイルスによるCwGを比較するために、2005年3月から2014年2月までに得られたデータを比較した。

背景と目的

■ ロタウイルスワクチンが導入された2000年後半以前は、軽症の胃腸炎を伴う良性痙攣(convulsions with mild gastroenteritis; CwG)患者の40~50%からロタウイルスが検出されていた。

■ しかし2010年以降、ロタウイルスの陽性率は低下し、一方でノロウイルスの有病率は徐々に上昇している。

■ そこで、最近3年間のノロウイルス関連CwGの発生率を調査し、さらにノロウイルス関連CwGとロタウイルス関連CwGの特徴を比較した。

 

方法

■ 2014年3月から2017年2月に当院に入院したCwG患者のカルテを、便のウイルス検査の結果を含めてレビューした。

■ ノロウイルス関連CwGとロタウイルス関連CwGを比較するために、2005年3月から2014年2月までに得られたデータのうち、ロタウイルス関連CwGの患者数が十分に含まれているものを追加でレビューした。

論文から引用。研究フロー。

■ データは、臨床的特徴(年齢、性別、季節的分布、胃腸症状、発作発現までの時間)、発作の特徴(頻度、持続時間、タイプ、脳波所見)、検査所見について集められた。

 

結果

■ 3年間の調査期間中に42名人がCwGと診断された。

■ 40人(95.2%)の患者で便中のウイルスを調べたところ、32名(80.0%)の患者で検出された。

■ ノロウイルス遺伝子型IIは40人中27人(67.5%)、ロタウイルスは3人、アデノウイルスは2人に検出された。

■ 2005年3月から2017年2月に、計140人のCwG患者が登録された。

■ ノロウイルス関連CwG患者44人とロタウイルス関連CwG患者26人の年齢は、それぞれ18.66±5.57カ月、19.31±7.37カ月(平均±標準偏差)だった(P>0.05)。

ノロウイルス関連のCwGはロタウイルス関連のCwGよりも春に少なく(13.6% vs. 34.6%、P = 0.04)、両CwGは冬にピークを迎えた(それぞれ63.6%、46.2%)

ロタウイルス関連CwGよりもノロウイルス関連CwGの方が嘔吐が多く(97.7% vs. 80.8%;P = 0.02)、ノロウイルス関連CwGの方が胃腸炎症状発現から発作発現までの期間が短かった(2.00 ± 1.06 vs. 2.58 ± 1.21日,P = 0.04)

■ 発作の持続時間は両群ともに5分以内が多かった(95.5% vs.92.3%)。

群発発作はノロウイルス群でより頻繁に発生していた(79.5% vs. 57.7%)が、有意差はボーダーラインだった(P = 0.05)

■ また、ノロウイルス感染症では、後頭部の徐波がより頻繁に認められた(34.9% vs.11.5%; P = 0.03)。

論文より引用。

 

結論

■ CwGの最も多いウイルス性病原体はノロウイルスであり、その発生率は67.5%だった。

■ ロタウイルスによるCwGと比較して、ノロウイルスによるCwGは春に発症することが少なく、嘔吐を伴うことが多く、胃腸症状が出てから発作が起きるまでの期間が短く、脳波では後頭部徐波を示すことが多かった。

 

スポンサーリンク(記事は下に続きます)



 

これまでロタウイルス優位だった胃腸炎関連痙攣は、ノロウイルスの方が多くなるかもしれない。

■ 軽症胃腸炎関連けいれんは、経験的にカルバマゼピン(テグレトール)が使用され、多くは単回投与でほとんどが頓挫します。

■ 最近は、フェノバルビタールによる報告もありますので、考慮してもいいかもしれません(Brain Dev 2019; 41:600-3.)。

 

■ また、胃腸炎関連痙攣はノロ・ロタウイルスに限らず、他の病原体でも起こりえますので、注意が必要ですが、まずはノロウイルスが優位になってくる可能性は念頭に置いておいたほうがよさそうです。

 

created by Rinker
¥4,840 (2024/04/26 11:17:10時点 Amazon調べ-詳細)

今日のまとめ!

 ✅ 今後、胃腸炎関連痙攣(CwG)はノロウイルスの比率が高くなる可能性があり、ノロウイルス関連CwGの方が嘔吐が多く発作発現までの時間が短く、群発発作はより多いかもしれない。

このブログは、私の普段の勉強の備忘録やメモであり、細かい誤字脱字はご容赦ください。基本的に医療者向けです。

知識の共有を目的に公開しておりますが、追加して述べる管理人の意見はあくまでも個人としての私見です。
所属するいかなる団体の立場も代表するものではありませんし、すべての方に向いているという情報でもありません。予めご了承いただきたく存じます。

このブログの『リンク』は構いません。
しかし、文章やアイデアを盗用・剽窃・不適切な引用したり、許可なくメディア(動画を含む)に寄稿することはご遠慮ください。
クローズドな場での勉強会などに使用していただくことは構いません。
Instagram:2ヶ月で10000フォロワーを超えました!!!

Xでフォローしよう