以下、論文紹介と解説です。

Tso WW, Kwan MY, Wang YL, Leung LK, Leung D, Chua GT, et al. Severity of SARS-CoV-2 Omicron BA. 2 infection in unvaccinated hospitalized children: Comparison to influenza and parainfluenza infections. Emerging Microbes & Infections 2022:1-29.

香港全体のデータベースから、0~11歳の小児におけるオミクロンBA.2優位の第5波(2022年2月5~28日; n=1144)、インフルエンザウイルスとパラインフルエンザウイルス(2019年1月1~31日; それぞれn=32212; n=16423)について転帰を比較した。

背景

■ SARS-CoV2 オミクロン株による入院が世界的に急増している。

■ ワクチン未接種の入院した小児におけるオミクロン株BA.2の重症度は不明である。

 

方法

■ オミクロン株流行中のCOVID-19感染の重症度と臨床転帰を、未感染ワクチン未接種の入院小児において、インフルエンザやパラインフルエンザウイルス感染症との比較で検討した。

■ この集団ベースの研究では、香港全体のCDARSデータベースからすべての公立病院での入院データを取得し、0~11歳の小児におけるオミクロンBA.2優位の第5波(2022年2月5~28日; n=1144)、インフルエンザウイルスとパラインフルエンザウイルス(2019年1月1~31日; それぞれn=32212; n=16423)について重症転帰を比較した。

 

結果

■ オミクロン株の流行初期における1144例中、2例(0.2%)の死亡が記録された。

■ 21例(1.8%)が PICU 入室を必要とし、相対リスクはインフルエンザウイルスよりもオミクロン株で高かった(n = 254; 0.8%; 調整 RR = 2.1; 95%CI 1.3-3.3,p = 0.001)。

■ 神経学的合併症の割合は、オミクロン株で15.0%(n=171)であり、インフルエンザウイルス(n=2707; 8.4%; 調整RR=1.6; 95%CI 1.4-1.9;p<0.001)やパラインフルエンザウイルス(n=1258; 7.7%; 調整RR=1.9; 95%CI 1.6-2.2; p<0.001)より高かった。

■ クループは、オミクロン株(n=61,5.3%)がインフルエンザウイルス(n=601; 1.9%; 調整RR=2.0; 95%CI 1.5-2.6; p<0.001)より多かったが、パラインフルエンザウイルス(n=889; 5.4%)と変らなかった.

 

結論

■ 今回の結果から、過去にCOVID-19にかかったりワクチン接種をしていない入院小児では、オミクロン株BA.2は軽症ではないことが明らかになった。

■ オミクロン株BA.2は、インフルエンザウイルスやパラインフルエンザウイルスよりも神経病原性が高いようだった。

■ また、インフルエンザウイルスよりも上気道をターゲットとしていた。

 

アンカーリング効果など、心理的陥穽に陥らず、現在のリスクを評価できるように気をつけたいものです。

■ いままで少ない感染者数であったものが急速に増えてくるときには、リスクを強く感じやすくなりますし、これまで重症がおおかったデルタ株と比較して軽症化したと聞けば、大丈夫と思いやすくなるのが心理的効果といえます。

■ たとえばアンカーリング効果などがそれにあたるでしょう。

 

■ しかし、今までなにも流行がなかったと仮定し、『インフルエンザの2倍リスクのあるウイルスが流行している』『流行のしやすさはインフルエンザよりも遥かに高い』と聞けば、『リスクのある相手だ』と評価するのが正当でしょう。

 

■ 個人の感染対策をすることと、経済活動をすることは両立します。

■ そして、人混みでマスクをすることと、熱中症対策をとることも両立するでしょう。

■ おそらくこれから、受診がむずかしくなったり、救急車が来る時間がのびたり、さまざまなことが起こってくる可能性があります。

■ 私は、自分自身の感染対策を怠らず(それでも、感染する可能性は充分あると覚悟はしています)、必要なワクチンは接種しておきたいと思っています(できれば私自身は、はやく4回目接種を受けておきたいと思っています)。

 

 

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