食洗機に残った洗剤は、腸管のバリア機能を傷害する?

『アウトサイド-イン仮説』は、皮膚にとどまらず、腸管でも成り立つ?

アレルギーの悪化ルート・仮説として、皮膚からの感作・悪化がひろく認められる考え方になりました。

■ さて、経皮感作ですので皮膚を中心に考えるのですが、上皮細胞は腸管にも存在します。

■ すなわち、アレルギー疾患の発症リスクを上昇させるアウトサイド-イン仮説を、腸管にも広げる考え方がでてきているということです。

■ そのひとつが『洗剤』で、 最近の研究結果を共有します。

※食洗機を使ってはいけないという話をしているわけではなく、あくまで腸管の細胞モデルを使用した研究で、よりリスクの高い成分を同定しようとしている研究の途中段階の共有です。

Ogulur I, Pat Y, Aydin T, et al. Gut epithelial barrier damage caused by dishwasher detergents and rinse aids. Journal of Allergy and Clinical Immunology. 2023;151(2):469-484.

腸管上皮細胞モデルを用いて、業務用・家庭用食洗機の洗剤・リンス剤の影響を、細胞毒性、バリア機能、トランスクリプトーム、タンパク質発現などを評価した。

背景

■ 腸管上皮バリアの漏出と関連した多くの慢性炎症性疾患の有病率が増加していることから、食器洗い機用洗剤の多用が他の要因とともにどのような役割を担っているのかを調査することが求められている。

目的

■ 業務用と家庭用食器洗浄機に使用される洗剤とリンス剤が、消化管上皮細胞の細胞毒性、バリア機能、トランスクリプトーム、タンパク質発現に及ぼす影響を調べることを目的とした。

方法

■ 腸管細胞を液体-液体界面透過性支持体上に構築し、直接細胞毒性、経上皮電気抵抗、傍細胞流動、免疫蛍光染色、RNA配列トランスクリプトーム、標的プロテオミクスを行った。

結果

■ 観察された洗剤の毒性は、1:20,000 v/v希釈までの用量依存的なリンス助剤への曝露に起因するものであった。
■ 液体-液体界面培養、オルガノイド、腸オンチップにおいて、特にリンス剤による上皮バリアの破壊が観察され、経上皮電気抵抗の低下、細胞間の流量増加、不規則かつ不均一なタイトジャンクション免疫染色が認められた。

■ リンス剤の各成分を個別に調べたところ、アルコールエトキシレートは強い毒性とバリア障害作用を示した。
■ RNAシーケンサーのトランスクリプトームとプロテオミクスのデータから、上皮細胞の細胞死、シグナル伝達とコミュニケーション、発生、代謝、増殖、免疫と炎症反応におけるアップレギュレーションが明らかになった。
■ 興味深いことに、業務用食器洗浄機の洗剤の残渣は、洗った食器や使いかけの食器に、かなりの量の細胞毒性や上皮バリア障害を起こすリンス剤として残っていることを示した。

結論

■ 細胞生存、上皮バリア、サイトカインシグナル伝達、代謝に関与する遺伝子の発現は、業務用食器洗浄機で使用される濃度のリンス助剤によって変化した。
■ すすぎ剤に含まれるアルコールエトキシレートが、上皮の炎症とバリア障害を引き起こす原因成分であることが同定された。

 

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