保湿成分の含まれた保湿剤は、角層を強化して、より改善させる可能性がある

角質層のバリア機能向上に寄与する保湿成分とその効果に関する研究の概要は?

■ 角質層は、皮膚バリア機能の多くを担います。
■ そして保湿剤として、皮膚に特定の脂質を塗ることで角層のバリア機能を改善させる可能性があります。
■ とはいえ、どの保湿成分がよいかは、検討の余地があるでしょう。
■ 保湿剤の保湿成分としては、さまざまなものがあります。
■ たとえば、天然保湿因子としてのセラミド、トリグリセリド、コレステロールが挙げられます。

■ 最近、湿疹のできやすい乾燥肌の人を対象に、皮膚脂質と保湿剤を配合した保湿剤と一般的なエモリエンの効果を比較した研究がBJDに公開されていました。

Danby SG, Andrew PV, Kay LJ, et al.: Enhancement of stratum corneum lipid structure improves skin barrier function and protects against irritation in adults with dry, eczema‐prone skin*. British Journal of Dermatology. 2022, 186:875-886.

乾燥性湿疹を起こしやすい成人34人を対象に、片方の前腕と下腿に試験用クリーム、もう片方に対照のエモリエントクリームを塗布し、4週間治療を行った。

背景

■ アトピー性皮膚炎の患者における皮膚は、角層脂質の異常が特徴である。
■ これによりラメラ構造が破壊され、皮膚のバリア機能が低下し、刺激物質やアレルゲンに対する感受性が高まる。

目的

■ セラミド、トリグリセリド、コレステロールを含む多粒子エマルジョンのクリームが、皮膚バリア機能を強化し、刺激から保護できるかを検討する。

方法

■ 乾燥性湿疹を起こしやすい成人34人を対象に、観察者盲検患者内対照ランダム化試験を実施した。
■ 参加者には片方の前腕と下腿に試験用クリーム、もう片方に対照のエモリエントクリームを塗布し、4週間治療を行った。

■ 治療前後で皮膚の特性を測定し、脂質構造は新しいインターフェースを用いたフーリエ変換赤外分光法で評価した。

結果

 試験クリームを用いた部位は、皮膚バリアの完全性が高くあり、経皮水分蒸散量の局面下サイズが-162(95%信頼区間 -206~-118)だった。
■ (試験クリームを塗布することで)ラウリル硫酸ナトリウムに対する皮膚感受性は低下し(視覚的発赤スコア -0.5、95%信頼区間 -1.00~-0.25)、経皮水分蒸散量も低下した(-15.3 g/m²/h、95%信頼区間 -20.3~-10.4)。

■ 試験クリームで処理した部位では脂質鎖の秩序化が促進され、これは皮膚バリアの完全性と有意に関連していた(r = 0.61)。
■ 基準部位と比較して、試験クリームによる治療は角層水分量を増加させ(静電容量単位 8~61、95% CI 6~10.6)、乾燥徴候を低下させた。

結論

■ 試験クリームは皮膚のバリア回復を促進し、乾燥や刺激から皮膚を保護することが示された。
■ 英国で一般的に処方されるエモリエント剤と比較して、乾燥した敏感肌の管理に非常に適していることが確認された。

 

 

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