牛乳アレルギーに対する経皮免疫療法Viaskin milkは有効か?

治療の難しい牛乳アレルギー。経皮免疫療法ViaskinのフェーズI/II試験の結果。

■ 牛乳アレルギーは、日本でも多い食物アレルギーですが、世界的にも多い食物アレルギーです。

■ 多くは自然寛解するとされていますが、年齢が高くなるまで持ち越すことも少なくなく、アナフィラキシーの大きな原因食物とされています。
さらに、誤食により症状が誘発される可能性も低くありません。

■ しかし、牛乳アレルギーに対する治療はかならずしも簡単ではありません。

■ リスクを軽減したルートとして、経皮免疫療法が日本でも開発されていますが、先行してピーナッツで『Viaskin』が開発されています。

■ そのViaskinが牛乳に対しても開発中です。
■ その第1-2フェーズ試験がJAMA Pediatrics誌に発表されました。2歳から17歳の重症牛乳アレルギーの児に12ヶ月間使用する方法で実施されています。

Petroni D, Bégin P, Bird JA, Brown-Whitehorn T, Chong HJ, Fleischer DM, et al. Varying Doses of Epicutaneous Immunotherapy With Viaskin Milk vs Placebo in Children With Cow’s Milk Allergy: A Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatrics 2024.

2歳から17歳のIgE依存性牛乳アレルギー児198名に対し、経皮免疫療法Viaskin milkを150μg、300μg、500μg、プラセボを12ヶ月間毎日貼布した。

重要性

■ 現在、アレルゲン特異的免疫グロブリンE(IgE)依存性牛乳アレルギー(CMA)に対する小児の食物アレルギーに対する認可された治療法は存在しない。

目的

■ IgE依存性CMAの小児に対するViaskin milkによる経皮免疫療法の投与量、有効性、安全性を評価する。

デザイン、設定、参加者

■ 2014年11月から2017年12月に行われた、2歳から17歳のIgE依存性CMA児を対象としたフェーズ1/2、2部構成のランダム化、二重盲検、プラセボ対照の投与量範囲臨床試験である。
■ 米国とカナダの17施設で実施された。

■ CMAの診断は、研究開始時に二重盲検、プラセボ対照食物負荷試験によって確認された。
■ パートAでは、Viaskin milk 150μg、300μg、500μgの短期間の安全性を評価し、パートBでは、治療の12ヶ月間にわたる3つの投与量とプラセボの有効性と安全性を評価した。
■ 医師によって診断されたCMA 308人のスクリーニング参加者の中から、198名が適格性基準(誘発量300mg以下)を満たし、ランダム化された。

介入

■ Viaskin milk(150μg、300μg、500μg投与量)の安全性は、3週間(パートA)で評価された。
■ パートBでは、さらに180人の参加者がランダムに選ばれ、Viaskin milkを150μg、300μg、500μgまたはプラセボ(1:1:1:1)で12ヶ月間投与された。

主な結果と指標

■ プライマリアウトカムは、治療に反応した参加者の割合だった。
■ 治療に反応したとは、牛乳タンパク質の累積反応量が10倍以上増加した(少なくとも144mgに達する)か、または牛乳タンパク質の累積反応量が12ヶ月目の二重盲検プラセボ対照食物負荷試験において1444mg以上になることと定義された。

結果

■ ランダム化された参加者の95.5%(平均[SD]年齢、8 [4.17]歳、男性124人[198人中62.6%])が治療を完了した。
■ 最も高い反応率は、Viaskinミルクを300μg投与された参加者であり、49人中24人が反応者(全体として49.0%)であったのに対し、プラセボ群では53人中16人が反応者(30.2%)だった(オッズ比2.19、95%CI、0.91-5.41、P= .09)。
■ 2歳から11歳の年齢群では最も高く(38人中22人[57.9%] vs 40人中13人[32.5%]、P= .04)。

■ 治療による有害事象の大多数は、適用部位の軽度または中等度の反応だった。
■ Viaskin milk 500μg投与群の参加者の1人が治療関連のアナフィラキシーを経験した。

結論と関連性

■ このランダム化臨床試験では、Viaskin milk 300μgによる毎日12ヶ月間の経皮免疫療法が、IgE依存性CMAの2歳から11歳の小児における統計的に有意な治療反応性と関連した。
■ 治療関連アナフィラキシーと治療関連の中止率は低かった。
■ IgE依存性CMAの小児にとっての実用的な治療オプションとしてViaskin milkを探求するためには、さらなる研究が必要である。

 

 

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