オマリズマブ(商品名ゾレア)は、経口免疫療法の効果と安全性を上昇させる

食物アレルギーに対する経口免疫療法の有効性と安全性を高める研究がすすんでいます。

■ 食物アレルギーは、先進国で増えています。
■ 日本では、鶏卵、牛乳、小麦、種子類(ナッツ類)、ピーナッツなどが主な原因ですが、世界では特に、ピーナッツが問題となっています。
■ そしてピーナッツや木の実類アレルギーは治りにくいとされています。

■ アレルギーの原因となる食品を除去し、緊急時の薬を持ち歩くことが標準療法です。
■ しかし、重いアレルギー反応は生活の質に大きく影響します。

■ 現在、標準療法ではありませんが、『症状が起こらない程度の量を食べ続ける』経口免疫療法の研究がすすんでおり、ピーナッツアレルギーには米国でPalforzia®が承認されました。

■ しかし標準療法とはいえ副作用のリスクは避けられません。
■ 経口免疫療法が食物アレルギーの治療として有用であることは間違いありませんが、リスクもまた上がってしまうという二律背反の状況が生まれるのです。

■ そのリスクを軽減するために、オマリズマブという薬と経口免疫療法の組み合わせが、特に複数アレルギーを持つ子供に効果的という報告があります。

■ しかし、さらに研究が求められていました。

■ そして最近、オマリズマブの経口免疫療法への効果を確認したランダム化比較試験が報告されています。

Mortz CG, Parke L, Rasmussen HM, Kjaer HF, Bindslev-Jensen C. A randomized, double-blind placebo-controlled study on the efficacy of Omalizumab on food allergy threshold in children with severe food allergy. Allergy.n/a(n/a).

基準をみたした23人をオマリズマブ群とプラセボ群に3:1でランダム化し、3ヵ月間治療した。

背景

■ 食物アレルギーは小児期に多く見られ、その閾値が低いため、原因となる食物を誤って摂取してしまうリスクがあり、防ぐことが困難である小児も存在する。
■ 生命を脅かす可能性があるこの疾患への治療法の開発が強く求められている。
■ 本研究の目的は、食物アレルギーを持つ小児におけるオマリズマブの有効性を評価することである。

方法

■ 本研究は単施設で行われた二重盲検プラセボ対照試験である。
■ DBPCFC(二重盲検プラセボ対照食物挑戦試験)で累積閾値443mg以下の食物蛋白を有する食物アレルギー小児を、オマリズマブ(喘息治療用量)またはプラセボに3:1の比率で無作為に割り付けた。
■ 3ヵ月後、2回目のDBPCFCを実施し(ステップは3、10、30、100、300、1000、および3000mgの食物タンパク)、陰性であれば、10,000および30,000mgの食物タンパクまで別途オープン負荷試験を行った。
■ 有効とは、閾値が2段階以上上昇したものと定義された。
■ 有効でなかった参加者には、高用量のオマリズマブが投与された。
■ 6ヵ月後には3回目のDBPCFCが行われた。
■ 皮膚テスト、血液サンプル、アトピー性合併症の重症度は、試験開始時および治療3ヵ月後に記録された。

結果

■ 計20人の小児が3ヵ月後に評価された(オマリズマブ群14人、プラセボ群6人)。
■ オマリズマブを投与された小児は全員、閾値が少なくとも2段階上昇し、オマリズマブ群とプラセボ群との間で有意差が認められた(p = 0.003)。
■ オマリズマブ投与前の閾値は食物蛋白13~443mgであったが、投与3ヵ月後の閾値は44,000mg(範囲1143~44,000)まで上昇した。

■ プラセボ群では、試験期間中に2人の小児が閾値の改善を見せた。

結論

■ オマリズマブを投与した小児の閾値の上昇は、患者の安全性を有意に改善し、すべての小児を少量のアレルゲンから保護した。

 

 

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