ヘーゼルナッツの経口免疫療法は可能か?

ナッツアレルギーが増加しているなか、ヘーゼルナッツ(ハシバミ)経口免疫療法に関する報告があります。

■ 木の実アレルギーの増加が、知られるようになってきました。
■ 世界中でナッツアレルギーが増えていて、日本でも3年ごとに行われる全国の食物アレルギー調査で、2015年には8位だったナッツが、2018年には4位に、そして2021年には3位に上がっています。

■ 日本でのナッツ類のアレルギーでは、クルミが最も多く、全体の56.5%を占めていて、次にカシューナッツが21.2%、マカダミアナッツが5.5%となっています。
■ アーモンドやピスタチオ、ペカンナッツ、ヘーゼルナッツ、ココナッツ、カカオ、クリ、松の実などもアレルギーの原因になっています。
■ ヘーゼルナッツのアレルギー検査は直接はなく、「ハシバミ」としての特異的IgE抗体を検査することで確認できますが、日本ではそこまで多くはないということです。

■ しかし、特に欧州ではヘーゼルナッツアレルギーが多いとされています。

■ ヘーゼルナッツのアレルギー治療には、経口免疫療法が注目されています。これについての報告をみなさんと共有したいと思います。

Moraly T, De Chambure DP, Verdun S, Preda C, Seynave M, Vilain AC, et al. Oral immunotherapy for hazelnut allergy: a single-center retrospective study on 100 patients. The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2020; 8:704-9. e4.

18歳未満の100人のヘーゼルナッツアレルギー患児に対し、少なくとも6ヵ月間のヘーゼルナッツ経口免疫療法を実施した。

背景

■ 経口免疫療法(OIT)は、IgE依存性食物アレルギー患者の誤食による食物によるアレルギー反応から保護し、患者のQOLを改善する可能性がある。
■ このアプローチは、欧州における食物アレルギーの主な原因であるヘーゼルナッツについて評価されたことはない。

目的

■ 6ヵ月間のOIT後にヘーゼルナッツが脱感作された患者の割合を明らかにし、脱感作成功の予測因子を同定する。

方法

■ 単一施設の後ろ向き研究において、ヘーゼルナッツ摂取後の過敏反応の既往、ヘーゼルナッツ皮膚プリックテスト陽性または特異的IgE陽性、二重盲検プラセボ対照食物負荷試験陽性で定義されるIgE依存性アレルギーに対して、少なくとも6ヵ月間のヘーゼルナッツOITを受けた18歳未満の患者を対象とした。
■ ヘーゼルナッツ蛋白 1635mg(約8個のヘーゼルナッツ)に耐えられる患者をヘーゼルナッツ脱感作とした。
■ 6ヵ月のOIT後に脱感作された患者の割合を決定し、試験開始時変数と脱感作の成功との関連を調べ、OITに関連した有害反応の頻度と重症度を推定した。

結果

■ 100人の患者が組み入れられた(64%男性、年齢中央値5歳)。

■ 重篤なアレルギー反応の既往は7%に認められた。

■ 6ヵ月後、脱感作された患者の割合は34%(95%信頼区間 25-44%)だった。

■ 誘発量(二重盲検プラセボ対照食物負荷試験で過敏反応を誘発したヘーゼルナッツ蛋白の量と定義)の中央値は、ベースライン時の106mg(四分位範囲51-249)からOIT 6ヵ月後には523mg(四分位範囲190-1635)に増加した(P < 0.0001)。
■ 治療期間が長くなるにつれて、脱感作患者の割合は増加した。
■ 多変量解析を用いると、脱感作の成功は、年齢(オッズ比[OR] 1.5;95%CI 1.2-2.2)、ヘーゼルナッツ皮膚プリックテストの膨疹径が小さい(OR 0.61;95%CI 0.4-0.8)、ヘーゼルナッツ特異的IgE値が低い(OR 0.86;95%CI 0.72-0.98)、カシューナッツアレルギーがないこと(OR 0.42;95%CI、0.12-0.64)と関連していた。
■ 副反応は患者の30%にみられたが、重篤なものはなかった。

結論

■ 3~9歳の患者100人の集団において、この検討の結果は、ヘーゼルナッツOITがヘーゼルナッツ脱感作に関連し、この治療を受ける大多数の患者において安全である可能性があることを初めて示した。

 

 

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