Lau S, et al. Oral application of bacterial lysate in infancy decreases the risk of atopic dermatitis in children with 1 atopic parent in a randomized, placebo-controlled trial. J Allergy Clin Immunol 2012; 129:1040-7.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22464674
少し前の文献になりますが、小児アレルギー学会の講演で見かけた文献の一つです。
以前、当ブログで、親指しゃぶりや爪噛みの癖がアレルゲン感作を抑制する()や、伝統的農法をしている環境が気管支喘息を少なくする()といった「衛生仮説」を支持する研究結果を提示しましたが、これを人為的に介入する試験結果になります。
親指しゃぶりや爪噛みの癖は、アレルゲン感作を抑制する: コホート研究
伝統的農法をしている環境の方が、新しい農法をしている環境より気管支喘息が少なくなる: 症例対照研究
P: ハイリスク(アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、喘息を持つ両親が一人もしくは二人とも)の新生児606人
E: 細菌溶解液(Pro-Symbioflor;加熱殺菌された非病原性グラム陰性E.coli Symbio DSM 17252と非病原性グラム陽性E faecalis Symbio DSM 16440) 10滴・3回/日 生後5週から生後7ヶ月まで C: プラセボ O: 3歳までのアトピー性皮膚炎累積罹患率(Hanifin and Rajka基準で診断) |
結果
526人は生後7ヵ月までを完遂し、487人は3歳まで完了した。
安全性と忍容性は高く、有害事象は腹痛(両群0.8%)、下痢(介入群7.5%、プラセボ群7.4%)、腹部膨満(両群0.1%)であり、重篤な胃腸症状(例えば出血性腸炎や腸重積症)は認めなかった。
アトピー素因が母のみであるか、両親ともにある児において、アトピー性皮膚炎発症率は両群で有意差はみとめなかった。
しかし、アトピー素因が両親どちらかのみに認めるサブグループにおいて、アトピー性皮膚炎罹患率は、介入群で生後31週後に有意に低下しており(相対危険度、0.52; 95%CI、0.3-0.9)、介入群では、154名中15名、プラセボ群は145例中27例がアトピー性皮膚炎を発症していた(p=0.030)。
論文から引用。
アトピー素因が両親どちらかのみであるサブグループ群では、介入群(細菌溶解液内服)がアトピー性皮膚炎発症率が低い。
この効果は、父のみがアトピー遺伝形質をもつ新生児群でより有意だった(11%対32%、P = .004; 相対危険度 0.34; 95%信頼区間 [0.2-0.7])。
血清総IgE濃度の中央値は、7ヵ月で5kU/L(P =.824)、24ヵ月で介入群vsプラセボ群 9.1kU/L vs 10.0kU/L(P =.596)、36ヵ月で24.3 vs 22.9kU/L(P =.283)だった。
コメント
加熱殺菌された細菌溶解液は、低リスクでアトピー予防できることを示唆し、特に父がアトピー素因を持つ方がアトピー性皮膚炎発症を予防するのではと結論されていました。しかし、Impactは大きいですが、加熱殺菌されているとは言え細菌溶解液を新生児期から内服して、しかも600人以上も参加者を集めるとは、、、。日本ではちょっとできなさそうです。また、感作も予防できていない結果でした。