Schmitt J, et al. Allergy immunotherapy for allergic rhinitis effectively prevents asthma: Results from a large retrospective cohort study. J Allergy Clin Immunol 2015; 136:1511-6.
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■ 日曜日ですが珍しく更新します。6月から7月にかけて学会発表が4題ほどあり、きちんと精読しているのは少ないのですけど、いつもより論文を読んでいるので、、。忘れないうちに文章にしておこうと思います。来週から5週連続病院の当直+αの準夜の当直が結構あって、学会や講演の準備もあわせて体力と時間との勝負が始まります。当院の当直はきついのです、、
■ さて、それはさておきアレルギーを専門としている我々の中で有名な研究のうちの一つに、アレルギー性鼻炎の患児に対して花粉皮下免疫療法(SCIT)を行うと喘息発症リスクを減らすというものがあります(J Allergy Clin Immunol 2002;109:251-6.)。しかし、この研究はランダム化はされているものの非盲検研究でした。
J Allergy Clin Immunol 2002;109:251-6.から引用。SCIT群は喘息発症が低下する。
■ そのあとの発展はどうなっているのだろうと検索して見つけた論文ですが、2015年の結果でした、、。なお、この論文はすでに全文がフリーで閲覧できます。
■ と、UPした後に、すでに読んでいた論文であったことに気が付きました、、でも、今回のほうが少し詳しめに読みましたし、このままにしておきます。うーん、何回かこういうことがあるんですよねー。
アレルギー性鼻炎に対するアレルゲン免疫療法は喘息を予防する: 大規模後ろ向きコホート試験
E:2006年にAITを開始した群
C:2006年にAITを開始していない群
O:2007~2012年の喘息発症リスク
結局、何を知りたい?
✅アレルギー性鼻炎患者に対するアレルゲン免疫療法(AIT)が、その後の喘息を予防するかどうかということを知ろうとしている。
結果
■ リスク比(RRs)は、年齢、性、アレルギー性鼻炎(AR)を理由とするヘルスケア使用、抗ヒスタミン剤使用で調整したポアソン関連関数を用いた線形モデルで算出された。
■ 計2431例(2.0%)において、2006年にAITが開始された。
■ 1646例(1.4%)で、2007-2012年から喘息が新規に診断された。
■ 2006年にAITを開始した患者では、AITを開始していなかった患者と比較して、2007-2012年に喘息発症リスクが有意に低かった(RR、0.60; 95%CI、0.42-0.84)。
■ 感度解析は、皮下免疫療法(RR 0.54; 95%CI、0.38-0.84)、天然アレルゲン(非変性アレルゲン)AIT(RR、0.22; 95%CI、0.02-0.68)の両方で有意な予防的効果を示唆した。
■ 3年間以上のAITは、3年間未満のAITより、強い予防的効果がある傾向にあった(RR 0.62; 95%CI 0.39-0.98 vs 0.57; 95%CI 0.34-0.94)。
論文から引用。アレルゲン免疫療法は喘息予防の効果がある。
結局、何がわかった?
✅アレルギー性鼻炎はあるが喘息を発症していない患者さんに対しアレルゲン免疫療法(AIT)を開始すると、喘息発症を0.6倍にするかもしれない。
✅また、その効果は3年以上AITをつづけたほうが効果が高い傾向があった。
コメント
■ 最初に述べた通りですが、ランダム化非盲検研究により、AR患児に対する花粉皮下免疫療法(SCIT)が喘息発症リスクを減らすことが示唆されており(J Allergy Clin Immunol 2002;109:251-6.)、また、ランダム化されているものの非盲検である研究が、AR患児に対する花粉舌下免疫療法(SLIT)が喘息発症リスクを減らすことができると報告していました(J Allergy Clin Immunol 2004;114:851-7.)。
■ この研究は、現実的なセッティングにおいてもAITはAR患者の喘息発症を効果的に予防するとしており、AR患者においてAITは喘息を予防するために考慮されなければならないとしていました。
■ ただし、交絡因子を除外されることはできないため、AITの予防的効果の過小評価となるかもしれないともされていました。
今日のまとめ!
✅成人のアレルギー性鼻炎患者さんに対し、アレルゲン免疫療法を行うと、喘息発症リスクを0.6倍にする。