完全母乳栄養児の体重減少は、どれくらいから異常といえるか?

Flaherman VJ, et al. Early weight loss nomograms for exclusively breastfed newborns. Pediatrics 2015; 135:e16-23.

 新生児の体重減少は一般的な現象です。

■ 完全母乳栄養児は特に、出生後の体重減少が多いとされています。しかし、完全母乳栄養に固執するあまり高張性脱水になる例も報告される様になっています(Arch Dis Child 2006; 91:874.)。

■ しかし、その体重減少がどれくらいだと「行き過ぎ」なのかは多数の赤ちゃんのデータを要します。そこで今回は、体重減少のノモグラムを検討した研究結果をご紹介いたします。

 

 36週以上で出生した赤ちゃん161471人のうち、完全母乳栄養児108907人の体重減少を検討。

背景:

■ 新生児の多くは出産時に母乳授乳を受け、体重減少は一般的的である。

■ 失われた体重は新生児ごとに大きく異なり、より多くの体重減少は疾患リスクを増加させる。

■ しかし、有害な転帰の軌道上かどうかを早期に鑑別することを補助するための、時間ごとの体重減少ノモグラムは存在しない。

 

方法:

■ 2009年〜2013年にNorthern California Kaiser Permanente病院で妊娠36週以上で出生した新生児161471人について、出産時の入院から出産形式、人種/民族、哺乳形式、体重に関するデータを電子カルテから抽出した。

■ 四分位回帰を使用し、母乳で育てた新生児の、時間と体重減量の百分率を推定し哺乳形式によって層別化したノモグラムを作成した。母乳育児でない児は除外された。

 

結果:

■ 108907人の新生児に関して、完全母乳と体重の記録が取得された(経膣分娩83433人および帝王切開分娩25474人)。

■ 体重減少の程度は、出産後6時間で出生形式により明らかに異なり、持続した。

経膣分娩の新生児のほぼ5%、帝王切開の新生児の10%以上が、出産後48時間で出生時体重が10%以上減少していた

72時間後までに、帝王切開の新生児の25%以上は、出生時体重が10%以上減少していた

 

論文から引用。A:経膣分娩 B:帝王切開、それぞれの体重減少のノモグラム。

 

結論:

■ 新生児体重減少ノモグラムは、完全母乳栄養の児の出産形式による体重減少率を示している。

■ ノモグラムは、軌道上から外れた体重減少や関連する病的状態のために、新生児の早期の鑑別に使用することができる。

 

結局、何がわかった?

 ✅108907人の完全母乳栄養児に関し、生後96時間までの体重減少のグラフが作成された。帝王切開児のほうが体重減少の程度は大きかった。

 

 

 完全母乳栄養児の体重減少の行き過ぎを見るための情報になるかもしれない。

■ 母乳栄養は、死亡リスクを低下させたり、川崎病を予防したりといったメリットも多いです(もちろん、その他多くの報告があります)。

完全母乳は、乳児期の死亡リスクを低下させる: メタアナリシス

母乳栄養は川崎病を予防するかもしれない

■ しかし、上記のように、母乳栄養に固執するあまり、高度脱水になって危険な状態になったという報告が散見されるようになりました。そのリスクを予測するためのノモグラムとして使用できるかもしれません。

■ なお、アレルギーの面では、長期完全母乳栄養は、一般的に思われているほど予防効果はないのではないかという報告が多くなっているようです。

母乳栄養は、10歳までのアレルギー発症を予防するか?

■ また、あまりに長期の母乳栄養は虫歯の原因にもなりかねないことも、以前ご紹介いたしました。

2歳以降の母乳栄養は、虫歯の原因となるかもしれない

■ 母乳栄養を推進することは、小児科医にとって重要なミッションではありますが、行き過ぎもまた戒める必要がありましょう。

 

 

今日のまとめ!

 ✅完全母乳栄養児の体重減少ノモグラムが作成された。体重減少のリスクを評価する助けになるかもしれない。

 

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