Czarnowicki T, et al. Novel concepts of prevention and treatment of atopic dermatitis through barrier and immune manipulations with implications for the atopic march. J Allergy Clin Immunol 2017; 139:1723-34.
アトピー性皮膚炎の最新の総論の全訳における、基礎医学メインの3回目です。
■ さて、アトピー性皮膚炎の最新の総論の全訳の3回目です。臨床系の話も組み込まれながらも、基礎医学メインの話が続いています。
【全訳】アトピー性皮膚炎の予防と治療の新しい概念(第1回/全6回)ーイントロダクションー
【全訳】アトピー性皮膚炎の予防と治療の新しい概念(第2回/全6回)ータイトジャンクションとフィラグリンー
■ まだ、基礎医学系の話がメインです。最初は全4回のつもりが、思った以上に長くなりそうで、全6回にさせていただきます。基礎医学4回、臨床医学2回ですね。
アトピー性皮膚炎の病態における、環境要因と微生物。
環境要因
■ プロテアーゼは、FLGプロセッシング、炎症調節とそう痒を介してAD病因に広く関係している。
■ 内因性の皮膚プロテアーゼは、プロテアーゼインヒビターによって調節され、バリア透過性およびホメオスタシスを維持する上で重要である。
■ それらは、プロテアーゼ活性化受容体(protease-activated receptors;PAR)の活性化を通し直接的および間接的なタンパク質分解効果がある。
■ PAR-2は、皮膚、特にケラチノサイトの多くの細胞型によって発現される。
■ AD患者の病変のある皮膚において、プロテアーゼおよびPAR-2の異常発現が示された。
■ 外因性の、例えばチリダニ、ゴキブリ、および黄色ブドウ球菌のようなアレルゲンに由来するプロテアーゼはまた、表皮バリアに影響を与え、タンパク質分解活性を直接介し、またはPAR-2活性化を介し間接的に作用し、異なるアレルギー性疾患の病因に関与している。
■ コルネオデスモゾームとTJの健全性と発現を悪化させることは、TEWLの増加に関連すると示唆される機序である。
■ これらのタンパク分解活性アレルゲンはプロテアーゼ関連のバリア障害を悪化させ、アレルゲンの侵入を増加させて、AD発症に関与する。
■ 皮膚の酸性pH(4-6)は、SC、脂質代謝、表皮分化、抗菌機能の完全な状態を維持するのに必要である。
■ AD患者における皮膚のpHは、中性/アルカリ性であることが判明しており、一部、酸性FLG分解産物の減少に起因する。
■ Jangらは、 ADの病因における皮膚pHの役割を評価し、マウス皮膚で、アルカリ化がカリクレイン関連のペプチダーゼ5を誘導したことを発見し、角質細胞の落屑、そう痒と皮膚炎に至った。
■ 増加したpHによって誘導されるセリンプロテアーゼの活性化はまた、Th2炎症を引き起こし得る。
■ 酸性pHは病原体(例えば黄色ブドウ球菌)の増殖を阻害して、ブドウ球菌性表面結合蛋白質の発現を減少させる。
■ いくつかのPAR-2アンタゴニストが研究されており、いくつかはすでに抗炎症性バリア修復活性を示唆している。
■ 皮膚の酸性度を復元することは、AD患者に対する補助治療的な戦略であるかもしれない。
■ Leeらは、中性クリームと比較して酸性クリームが、マウスのAD様皮膚病変を阻害するだけでなく、呼吸アレルギー炎症の発症も抑制することを示した。
結局、何がわかった?
✅皮膚バリア機能に関する、環境因子のレビューが述べられた。
さて次回は、基礎医学メインの最終回で、微生物とアトピー性皮膚炎の関連です。