Zielen S, et al. Sublingual immunotherapy provides long‐term relief in allergic rhinitis and reduces the risk of asthma: a retrospective, real‐world database analysis. Allergy 2017. [Epub ahead of print]
免疫療法が喘息発症を阻止するか?
■ 免疫療法が喘息を予防するかどうかは、まだ結論が出ていませんが、最近、ランダム化比較試験をご紹介いたしました。その結果では、喘息発症を予防はしないが、喘息症状や喘息薬物の使用のリスクは減らすというものでした。
花粉に対する舌下免疫療法は、喘息発症を予防するか?:ランダム化比較試験
■ 舌下免疫療法が喘息に効果があることは報告されていますから、納得できる結果ではあります。
ダニ舌下免疫療法は発作再燃を少なくする: ランダム化比較試験
■ このあたりは、まだデータが必要な領域ですし、処方データベースからの膨大なデータを元にした結果が報告されましたので、ご紹介いたします。
アレルギー性鼻炎患者に対し、舌下免疫療法2851例と対照71275例で対応した患者を選択し、その後の喘息発症を調べた。
背景
■ アレルギー免疫療法(AIT)は、長期間の有効性を有するアレルギー性鼻炎(AR)および/またはアレルギー性喘息(AA)に対する唯一の治療法である。
■ しかし、AITを受けている患者における、ARおよび/またはAAへの進行に関する現実的なデータはほとんどない。
目的
■ ARにおける雑草花粉舌下免疫療法(SLIT)錠剤の現実的で長期的な有効性および、喘息の発症および進行に対する影響を評価する。
方法
■ ドイツにおける縦断的な処方データベースのレトロスペクティブな分析において、雑草花粉におけるSLIT錠剤で治療したAR患者を、AITを受けていない対照群と比較した。
■ 重回帰分析を使用して、2群における治療中止後のARに対する救急的な薬物使用、喘息薬の使用、および喘息発症の時期の変化を比較した。
結果
■ すべての選択基準を適用した結果、SLIT患者2851例と対照患者71275例が選択された。
■ 治療中止後、SLIT錠剤群は、AITを受けなかった群よりもAR治療薬の使用が18.8%低かった(P <.001)(共変量を調整し前処置期間と比較)。
■ 喘息発症はSLIT錠群では、AITを受けなかった群と比較してより低く(オッズ比 0.696、P = .002)、喘息発症までの期間は有意に長かった(ハザード比 0.523、P = 0.003)。
■ SLIT中止後、SLIT錠剤群 vs AITを受けなかった群は、喘息薬の使用が16.7%少なかった(P = .004)(前処置期間と比較)。
結論
■ 雑草花粉SLIT錠剤を用いたAR患者の治療は、ARの進行が遅くなり、喘息発症頻度が低くなり、喘息の進行が遅くなることと関連していた。
結局、何がわかった?
✅喘息発症前のアレルギー性鼻炎に対し、花粉の舌下免疫療法を実施すると、アレルギー性鼻炎の進行が遅くなり、喘息発症リスクも低下した。
舌下免疫療法は喘息発症リスクを減らす、、、のか?
■ ランダム化比較試験では、喘息発症リスクには有意差がありませんでしたが、本研究結果では舌下免疫療法が喘息発症リスクを減らすという結果でした。
■ この研究はレトロスペクティブの症例対照研究であり、以前ご紹介したランダム化比較試験の方がエビデンスレベルは高いです。そこで、まだ免疫療法が喘息を予防するとまでは言えないと思います。さらに検討が進むことを期待したいところです。
今日のまとめ!
✅本検討は、舌下免疫療法が喘息発症リスクを減らすという結果を示していたが、まだこの領域の検討は必要と思われる。