Valovirta E, et al. Results from the 5-year SQ grass sublingual immunotherapy tablet asthma prevention (GAP) trial in children with grass pollen allergy. J Allergy Clin Immunol 2017.[Epub ahead of print]
舌下免疫療法が喘息を予防できるかに期待が集まっています。
■ アレルギー(アトピー)マーチの予防のために、免疫療法に期待が持たれています。
■ 本邦でもダニやスギに対する舌下免疫療法が保険適応となり、関心が集まってきているとも言えましょう。
■ そこで今回は、アレルギー性鼻結膜炎の小児に対し、舌下免疫療法を行うことで喘息を予防できるかどうかを検討した報告をご紹介致します。
アレルゲン免疫療法薬 TO-203(ミティキュア®ダニ舌下錠)の小児適応に係る用法・用量の追加承認取得について(2018 年 2 月 16 日)
ブログ記事は、『About Me』に記載通り、作成時点での状況を踏まえ、私の考えが入っています。
812人のアレルギー性鼻結膜炎を持つ小児に対し、雑草の舌下免疫療法を3年間実施し、喘息発症予防に効果があるかを調査した。
背景
■ アレルギー免疫療法は、アレルギー性鼻結膜炎やアレルギー性喘息の免疫学的原因を標的とし、アレルギー疾患の自然経過を変えるかもしれない。
目的
■ 第一の目的は、雑草舌下免疫療法錠剤投与が、喘息発症リスクをプラセボと比較して変更するかどうかを調査することだった。
方法
■ 花粉アレルギー性鼻炎結膜炎に関連したあきらかな既往があり、喘息に他する治療歴や徴候がない、計812人の小児(5-12歳)が、無作為二重盲検プラセボ対照試験に参加し、3年間の介入と2年間のフォローアップが行われた。
結果
■ 喘息発症までの期間に有意差は認められなかった(喘息は、肺機能の可逆性の障害と文書化された事前の定義によって決められた)(プライマリエンドポイント)。
■ しかし、治療後のフォローアップの2年間また5年間の全研究期間において、雑草舌下免疫療法錠剤による介入は喘息症状を経験するリスクもしくは試験終了後喘息薬物使用を有意に低下させた(オッズ比= 0.66、P < .036)。
■ また、雑草アレルギー性鼻炎結膜炎症状は、22%~30%低下した(全5年間でP < .005)。
試験終了後、アレルギー性鼻炎結膜炎における薬物療法の使用は、有意に少なかった(プラセボに対し相対的な差が27%(P < .001)。
論文から引用、管理人が情報を追加。左は鼻結膜炎症状の軽減を示し、右は喘息症状や薬物使用の軽減を示す。
■ 総IgE値、花粉特異的IgE抗体価、花粉に対する皮膚プリック試験の反応性は全て、プラセボと比較して低下した。
結論
■ 雑草舌下免疫療法錠剤による介入は、喘息症状や喘息の薬物を使用するリスクを低下させ、鼻結膜炎症状や薬物使用に対する、ポジティブで長期の臨床効果を示唆した。しかし、喘息発症の時期に対する効果は示さなかった。
結局、何がわかった?
✅雑草に対するアレルギー性鼻炎のある小児に対する舌下免疫療法は、喘息発症リスクを低下させなかったが、喘息症状のリスク・喘息薬物使用・アレルギー性鼻結膜炎症状のリスクは低下させた。
第一の目的である喘息発症は減らさなかったという結果だが、喘息や鼻結膜炎症状は減らしそうだ。
■ 最近PAIに報告されたメタアナリシスでは、まだアレルギー疾患の新規発症は予防できるかどうか分からないとされていました。
アレルゲン免疫療法は、アレルギー疾患の新規発症を予防するか?: システマティックレビュー&メタアナリシス
■ しかし、ダニに対する免疫療法は喘息発作リスクを減らすことがランダム化比較試験で既に報告されています。
■ また、1歳未満からのダニの経口免疫療法が、感作を減らす(ダニはなぜか感作予防できていませんが)という報告もあります。
1歳未満からのチリダニ類の経口免疫療法は12ヶ月後のアレルゲン感作を予防する: ランダム化比較試験
■ 本邦で使用できる舌下免疫療法はダニやスギのみですし、13歳以降の保険適応ですから、このまま使用できるわけではありません。しかし、舌下免疫療法は侵襲の少なく安全性も高いことから、ダニやスギによるデータが求められることになるように思いました。
今日のまとめ!
✅アレルギー性鼻結膜炎のある小児に対し、雑草の舌下免疫療法は喘息発症リスクは減らさないが、結果的に喘息や鼻結膜炎症状は減らしそうだ。