Ramsay LC, Buchan SA, Stirling RG, et al. Retraction Note: The impact of repeated vaccination on influenza vaccine effectiveness: a systematic review and meta-analysis. BMC medicine 2018; 16(1): 133.
前シーズンのインフルエンザワクチンの効果は、今シーズンに効果が少しでも残っているでしょうか?そのテーマの研究結果をご紹介します。
■ インフルエンザシーズンに入ろうとしています。これまでも、インフルエンザワクチンの効果に関してや、インフルエンザワクチンのアナフィラキシーは卵で起こっているわけではないことなどをご紹介してきました。
■ そこで、今回から、「前シーズンのインフルエンザワクチンは、今シーズンの接種に影響するか?」、「インフルエンザワクチンは、今シーズン中に効果が落ちるか?」、「子どもに対するインフルエンザワクチンは有効か?」の3テーマに関しての文献をご紹介していきたいと思います。
Ramsay LC, et al. The impact of repeated vaccination on influenza vaccine effectiveness: a systematic review and meta-analysis. BMC medicine 2017;15:159.
インフルエンザワクチンのVE(ワクチンの効果)を検討した20研究を、(1)今シーズン接種、(2)前シーズンのみ接種、(3)両シーズン接種、(4)どちらのシーズンも未接種に分類し、それぞれのVEを比較した。
背景
■ インフルエンザワクチンの有効性(vaccine effectiveness;VE)に対し、前年の接種に引き続き反復してワクチンを接種することによる影響は、矛盾した結果である。
■ それは、今シーズンのワクチンを受けることの利点に対し混乱を引き起こす可能性がある。
方法
■ システマティックに2016年8月17日までのMEDLINE、Embase、PubMed、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literatureをデータベース検索した。
■ 英語で公開された観察研究を、4種類ワクチン接種グループ、すなわち、(1)今シーズン接種、(2)前シーズンのみ接種、(3)両シーズン接種、(4)どちらのシーズンも未接種に分類した。
■ インフルエンザシーズンおよびタイプ/サブタイプによるワクチン接種群間のVEの差異(ΔVE)をランダム効果モデルを用いてプールした。研究プロトコールはPROSPERO(登録番号:CRD42016037241)に登録された。
結果
■ 我々は3435の報告を特定し、634報告の全文をレビューし、20報告に対してメタアナリシスが実施された。
■ 両シーズンのワクチン接種した群は、前シーズンのみのワクチン接種群と比較し、インフルエンザH1N1(ΔVE= 26%; 95%CI、15%〜36%)およびB型(ΔVE= 24%; 95%CI、7 %〜42%)には有効性が高く、H3N2にはその効果は認められなかった(ΔVE= 10%; 95%CI、-6%〜25%)。
■ 今シーズンのワクチンを受けた群は、いずれの季節にもワクチン未接種である群と比較して、H1N1(ΔVE= 61%、95%CI、50%~70%)、H3N2(ΔVE= 41%、95%CI、 33%~48%)、B型(ΔVE= 62%; 95%CI、54%~68%)と有効性が有意に高かった。
■ 両シーズン接種群は、今シーズンのみ接種群と比較して、H1N1(ΔVE= 4%、95%CI、-7〜15%)、H3N2(ΔVE= -12%、95%CI、 -27%~4%)、B型(ΔVE= -8%; 95%CI、-17%~1%)であり有効性に有意差はなかった。
結論
■ 患者の視点からみると、前シーズンのワクチン接種とは関係なく、今シーズンワクチン接種が有効であることをサポートしている。
■ 前シーズンのワクチン接種が、今シーズンのVEに悪影響を与えるという証拠は見出されなかった。
■ 今後のVE研究には、前シーズンから繰り返しの予防接種をより詳細に評価するために、複数の季節にわたる予防接種歴が含まれていることが重要である。
結局、何がわかった?
✅両シーズンのワクチン接種した群は、前シーズンのみのワクチン接種と比較し、H3N2以外ではインフルエンザワクチンの有効性が高かった。
✅今シーズンのワクチンを受けた群は、両シーズンとも未接種の群と比較し、有効性が高かった。
✅両シーズン接種群は、今シーズンのみ接種群と比較して、有効性に差がなかった。
前シーズンの接種は、今シーズンには影響しないようです。前シーズンにインフルエンザワクチン接種をしていても、いていなくても、接種はしておいたほうが良いといえます。
■ 前シーズンの予防接種の既接種・未接種に関わらず、今シーズンは摂取したほうが良い、とまとめられます。
■ 前シーズンのインフルエンザワクチンが、今シーズンのインフルエンザワクチンの効果を下げる可能性があるという報告もあるようですが、今回の検討では明らかではありませんでした。
■ 一方で、WHOは、9歳未満で過去の接種歴がない場合に2回としています。元文献がどこにあるのかはこのページからは明らかではありません。
■ 本邦で実施されたインフルエンザワクチンの効果は、13歳以降で有効性に有意差がなく、検討した人数が少なかった以外に「1回接種だから」の可能性もあります。
■ 個人的には2回接種のほうがいいのでは、、と思うのですが、WHOが過去の接種歴がある場合に1回接種で良いとしている根拠となる文献があればご教示ください。CDCの報告もみたのですが、2回接種の根拠になる引用文献はあるものの1回でよいという文献は提示されていなかったんですよね、、、
今日のまとめ!
✅前シーズンのインフルエンザワクチン接種は、今シーズンには影響しない。接種が勧められる。