吸入ステロイド薬に長時間作用型気管支拡張薬(LABA)を併用しても重大なリスクは上昇しない

Busse WW, et al. Combined Analysis of Asthma Safety Trials of Long-Acting β2-Agonists. New England Journal of Medicine 2018; 378:2497-505.

長時間作用型気管支拡張薬(LABA)の安全性。

うさみん
ねえ、ほむほむ。
LABAって、喘息にはよく使われるけど、リスクがあるというひともいるよね?

ほむほむ
確かにね。
おそらく、吸入ステロイドやロイコトリエン拮抗薬がなかった時代を経験している我々の世代までは特に、気管支拡張薬に対する疑念があるからね。
特に、LABAを単独で使用するのは避けないといけないことは確かだ。

うさみん
実際、リスクがあるとした報告があるの?

ほむほむ
うん。
Salmeterol Nationwide Surveillance Study (SNS)試験と、Salmeterol Multicenter Asthma Research Trial(SMART)試験は、LABAの危険性を指摘している。
その結果をうけて、FDAはボックス警告(枠組み警告)を指定したんだ。
ボックス警告は、FDAの警告の中では高いものになるから、FDAはLABAを製造している各社に安全性を証明するように指示をしたんだね。
その、LABAの安全性を検討した報告4件を結合した解析が、最近のNEJMに発表されたから、みてみよう。

 

 

長時間作用型β2-アゴニスト(LABA)の安全性を確認するために行われた4件の大規模ランダム化比較試験を結合して解析した。

背景

■ 喘息管理における長時間作用型β2-アゴニスト( long-acting β2-agonists; LABAs)に関する安全性の懸念は、死亡リスクが増加したという大規模な市販後調査最初に確認された。

■ 2010年に、食品医薬品局( Food and Drug Administration ; FDA)は、喘息に対するLABAを販売する4企業に対し、12〜17歳の青年と成人のLABA+吸入ステロイド併用療法の安全性と、吸入ステロイド単独の安全性を比較した前向きランダム化比較試験を行うことを義務づけた

■ FDAと連携して、メーカーは、独立した共同管理委員会が4試験の最終的な共同の解析を提供できるように試験方法を調和させた。

 

方法

■ 共同管理委員のメンバーとして、吸入ステロイド+LABA(併用療法)と吸入ステロイド単独とを比較する4試験の共同解析を行った。

■ プライマリアウトカムは、喘息に関連する挿管または死亡であった。

■ 事後のセカンダリアウトカムに、重篤な喘息関連イベントと喘息の増悪が含まれた。

 

結果

■ intention-to-treat(ITT)解析による36,010人の患者のうち、喘息関連の挿管(吸入ステロイド単独群 2例、併用療法群 1例)と喘息関連死亡4例(吸入ステロイド単独群 2例、併用療法群 2例)があった。

重篤な喘息関連イベント(入院、挿管、死亡)のセカンダリ解析では、吸入ステロイド単独群18,006例中108例(0.60%)、併用療法群 18,004例中119例(0.66%)は少なくとも1回の喘息関連イベントがあった(併用療法群における相対リスク 1.09; 95%信頼区間[CI] 0.83〜1.43; P = 0.55)

■ 吸入ステロイド単独群のうち2100人(11.7%)と併用療法群のうち1768人(9.8%)は、少なくとも1回の喘息増悪があった(相対リスク 0.83; 95%CI 0.78-0.89; P <0.001)。

 

結論

■ LABAと吸入ステロイドの併用療法は、吸入ステロイド単独による治療よりも重篤な喘息関連イベントのリスクが有意に高くせず、喘息増悪は有意に少なかった。

 

結局、何がわかった?

吸入ステロイド薬にLABAを併用した大規模ランダム化比較試験4件を結合した36,010人において、

 ✅喘息関連の挿管(吸入ステロイド単独群 2例、併用療法群 1例)と喘息関連死亡4例(吸入ステロイド単独群 2例、併用療法群 2例)を認めた。

 ✅吸入ステロイド単独群18,006例中108例(0.60%)、併用療法群 18,004例中119例(0.66%)は少なくとも1回の重篤な喘息関連イベント(入院、挿管、死亡)があった(併用療法群における相対リスク 1.09; 95%信頼区間[CI] 0.83〜1.43; P = 0.55)。

 

 

LABAの併用は、有害イベントを有意に増やさないと結論されていました。

■ LABA単独で使用することは推奨できませんが、まずはLABAの安全性が確認されたことにはなります。

■ すでに、このブログでも、いくつかの安全性試験をご紹介してきました。

■ ただ、Salmeterol Nationwide Surveillance Study (SNS)試験と、Salmeterol Multicenter Asthma Research Trial(SMART)試験は、LABAを吸入している患者が吸入ステロイドを必ずしも必要としていない時に実施されており、LABAと併用して吸入ステロイドを使用するかどうかは、重大な喘息アウトカムのリスクを軽減するかどうかを完全に説明したことにはなりません。

■ NEJMの同じ号に、FDAがボックス(枠組み)警告を外したという報告がありましたので、明日以降にご紹介します。

 

 

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今日のまとめ!

 ✅吸入ステロイドにLABAを併用し、重大なリスクを評価した大規模ランダム化比較試験4件を結合した結合解析により、LABAの安全性が報告された。ただし、まだ完全に説明したとは言えないという指摘もある。

 

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