吸入ステロイド薬は、身長の伸びをわずかに鈍化させ得る。しかし、気管支喘息治療が不十分であればやはり身長の伸びを悪くするかもしれない。
■ 小児の喘息死はガイドラインの普及、すなわち抗炎症薬(吸入ステロイド薬が主体)に伴い大きく少なくなり、2018年は先進国ではじめてゼロになったと考えられています。
■ まだまだ不十分な点はあるにせよ、吸入ステロイド薬の果たした役割は大きいと思います。
■ しかし、吸入ステロイド薬が、最終的な身長の伸びを1.2cm程度短くするかもしれないという報告は、ぜん息治療に携わる医師にも重くのしかかることになりました。
■ では、不十分なぜん息治療でも、身長には影響しないのでしょうか?今回は古い報告を2本ご紹介したいと思います。
Balfour-Lynn L. Growth and childhood asthma. Archives of disease in childhood 1986; 61:1049-55.
7歳から21歳の喘息患児342人に関し、身長の伸びに対するパターンを検討した。
■ 喘息の成長に対する影響は、ランダムに選択された7歳から21歳342人に対する前向き研究で詳細に記録された。
■ これらの被験者は、小児期喘鳴の全範囲をカバーしていた。
■ 成長抑制は、より重症の喘息に罹患した群の10歳において最初に認められ、そして最も顕著に認められたのは14歳だった。
■ 21歳までに、全ての群が対照群と有意差のない身長と体重に達した。
■ 経口ステロイド療法を一度も受けたことがなくとも、より持続性の高い喘息児では成長の遅れが生じたが、経口ステロイドを処方された児ではより成長が遅れた。
■ ステロイドの影響が成長を遅らせる事に対し、重症度は十分条件ではなく、喘息があり頻回の喘息エピソードのある患者に最も有意だった。
論文より引用。身長の伸びの低下とキャッチアップ。
Hauspie R, Susanne C, Alexander F. Maturational delay and temporal growth retardation in asthmatic boys. Journal of Allergy and Clinical Immunology 1977; 59:200-6.
2〜20歳の喘息男児に関し、身長の伸び・骨年齢・性成熟に関して縦断的に検討した。
■ 身長の伸び、骨年齢、性成熟に関し、2〜20歳の喘息男児で検討された。
■ 身長の成長パターンの平均が531人において縦断的に分析され(1,754測定)、生理学的成熟の遅延によって決定されるようだった。
■ 喘息男児の身長の伸びに関し、乳児期の遅れはなかったものの、小児期の一貫した軽度の遅れがあり、思春期にはより顕著に遅れがあり、成人期に向かってのキャッチアップを示した。
■ 思春期の成長速度は平均約1.3年遅れていた。
■ 骨年齢は370人のサンプルで縦断的に分析され(660件)、6歳から13歳までのすべての年齢でわずかに遅れていた。
■ 横断的に分析した91人の陰毛発生は、適切な参考データと比較した場合、明らかに遅れていた。
■ 喘息に続発する因子が身長や発達の遅れに関与しているというエビデンスがあった。
結局、何がわかった?
✅ 吸入ステロイド薬がまだ十分普及していない時期の報告において、気管支喘息は身長や発達の遅れの原因のひとつになっていたようだ。
身長抑制は、不十分なぜん息治療でも起こりうる。よりよいぜん息治療を考えていけるようになりたいものです。
■ この報告をご紹介したのは、「だから吸入ステロイド薬を使わなければならない」と申し上げたいのではありません。
■ 薬物療法をおそれるあまり、発作が多くなりさらに身長抑制も来すのは本末転倒であると思うのです。
■ そして、薬物療法を少なくするために環境整備や場合によっては免疫療法などをより積極的に併用していくべきなのではないか、、そう思っています。
■ 年初にあたりそんなことを考えながら、より良い治療を考えていきたいな、、そう考えました。
今日のまとめ!
✅ 吸入ステロイド薬は最終身長をわずかに低くするかもしれない。しかし、喘息発作も身長の鈍化に関与する可能性がある。より少ない吸入ステロイド薬になるように、環境整備や免疫療法も念頭に入れながら治療に向かいたい。