
酒さ様皮膚炎は、ステロイド外用薬を長期に毎日塗り続けると起こりやすい、全体に真っ赤になるような紅斑のことです。
■ 私は、アトピー性皮膚炎に対してステロイド外用薬を使用します。
■ ただし、ステロイド外用薬は副作用が起こりえ、もっとも多いのは皮膚の菲薄化(うすくなること)や多毛です。これらは中止することで改善します。
■ 一方で、酒さ様皮膚炎(イメージとしては赤ら顔)、場合によっては外用薬でも副腎抑制さえ起こりえます。
■ 酒さ様皮膚炎の治療は難しく、「起こさないような治療」が必要です。特に顔に対してのステロイド外用は、漫然と使用するような薬剤ではありません。
■ 今回は、ステロイド外用薬に続発した酒さ様皮膚炎の症例集積研究をご紹介します。
Rathi SK, Kumrah L. Topical corticosteroid-induced rosacea-like dermatitis: A clinical study of 110 cases. Indian Journal of Dermatology, Venereology, and Leprology 2011; 77(1): 42.
ステロイド外用薬の長期間・反復使用するという病歴がある、ステロイドによる酒さ様皮膚炎の例を検討した。
背景
■ ステロイド外用薬の長期間にわたる連続的な使用は、様々な臨床症状のある酒さ様皮膚炎につながる。
目的
■ 既知の疾患以外の理由で、ステロイド外用薬の長期間に反復使用するという病歴がある、ステロイド誘発性酒さ様皮膚炎(topical corticosteroid-induced rosacea-like dermatitis ;TCIRD)のある患者の様々な臨床症状を調査した。
方法
■ ステロイド外用薬が一般的に使用され既知の疾患のあったとする患者を除き、2年間にわたる患者計110人が研究に登録された。
■ ステロイドの外用治療および種類といった詳細な経過は、臨床検査ともに取得された。
結果
■ 対象は、18歳〜54歳、男性12名、女性98名だった。
■ ステロイド外用薬の使用期間は4ヶ月から20年間だった。
■ 最も一般的な臨床症状は、顔のびまん性紅斑だった。
論文より引用。
■ 大部分の患者は、ステロイドの中止によりリバウンド現象を示した。
■ 使用された最も一般的なステロイド外用薬はベタメタゾンバレレート(Betamethasone Valerate)であり、入手が容易で低コストであることに起因した。
結論
■ ステロイド外用薬の長期間にわたる連続使用では、多様な臨床症状を認める。
■ この皮膚炎の治療は困難であり、問題のあるステロイドの完全な中止を必要とし通常はゆっくり減量しながら行われる。
結局、何がわかった?
✅ 酒さ様皮膚炎は、女性に多く、ステロイド外用薬の使用期間は長期間であることがおおく、最も一般的な臨床症状は、顔のびまん性紅斑だった。
✅ ステロイド外用薬を中止するとリバウンドを起こし悪化する。ステロイド外用薬を中止する必要があるが、漸減していく治療が一般的である。
特に顔に対するステロイド外用薬の長期間の毎日の使用は行うべきではない。
■ Betamethasone Valerateは、商品名としてはリンデロンVにあたります。III群のステロイド外用薬ですので、一般には顔に長期に塗布はしません。
■ また、もともと顔はステロイド外用の吸収率が高く、慎重な治療を要する部位です。
■ 一方で、「顔へのステロイド外用薬が怖いから塗布しない」となると、大きく悪化し白内障などのリスクを大きくあげます。
■ 初期治療の段階で、必要であればステロイド外用薬を塗ることの問題点もお話ししながら、保湿剤へ切り替えていき塗る量・回数、そして早期のプロトピック軟膏への変更を指示するべきでしょう。
■ さらに、プロトピック軟膏も酒さ様皮膚炎を起こすことが稀にあるという報告もあるものの、ステロイド外用よりはるかに低いため、保湿剤に変更するまえに併用していくことで酒さ様皮膚炎のリスクを減らすことができるでしょう。
今日のまとめ!
✅ 酒さ様皮膚炎110例の症例提示により、女性に多く、ステロイド外用薬の使用期間は4ヶ月から20年間と長期で、最も一般的な臨床症状は、顔のびまん性紅斑だった。