冬季に皮膚が乾燥してバリア機能が下がるか?ということを検討した報告。
■ 冬季に皮膚のバリア機能が下がるということに関しては、日常診療として当たり前のように感じます。
■ ただ、冬季にアトピ—性皮膚炎が発症しやすいことは、ビタミンDと関連させている報告が多いです。
■ 私は、皮膚バリアを重要視しているので、それに関連した報告を探していてみつけた文献。
Kikuchi K, et al. The winter season affects more severely the facial skin than the forearm skin: comparative biophysical studies conducted in the same Japanese females in later summer and winter. Exogenous Dermatology 2002; 1:32-8.
晩夏と冬で、24歳から78歳までの健康な成人女性39人の皮膚バリア機能や角質水分量を測定した。
背景
■ アトピー性皮膚炎、乾癬、老人性乾燥症などの皮膚疾患は、冬に悪化する傾向を示す。
方法
■ さまざまな年齢層の健康な女性ボランティアにおける皮膚の機能的パラメータに対する季節的影響を調査した。
■ 角質層(stratum corneum; SC)のバリア機能のパラメーターとしての経表皮水分蒸散量(transepidermal water loss ;TEWL)、SCの水分量状態のパラメーターとしての高周波コンダクタンス、体温、色、一般的な表皮脂質量を含む生物物理学的非侵襲的測定は、24歳から78歳までの健康な成人女性39人において、晩夏と冬季に行われた。
■ 測定は、同じ気候制御室内において、露出域である頬部、半分衣服で覆われた領域である前腕屈曲部について行われた。
結果
■ SCのバリア機能は、頬部と前腕屈曲部の両方で冬季に有意に低下することが判明した。
■ この夏と冬の違いは、前腕よりも頬部のほうがはるかに大きかった。
■ SC水分量の状態は、前腕屈曲部では冬季に有意に低かったが、皮脂量が季節的変化を示さなかった頬部ではそのような季節的変化は明らかではなかった。
■ SCの代謝速度の季節変化を推定するために、39人のうち24人の角質細胞のサイズを測定した。
■ それは露出した頬部の皮膚でのみ低下する傾向があり、冬季のSCの代謝速度の増加を示唆していたが、それは半分覆われた前腕屈曲部ではやや大きかった。
■ 冬季の頬部の皮膚表面温度と発赤も有意に高かった。
結論
■ 無症候性の炎症は、冬季に顔面で観察されたTEWLの上昇と関連し、SCの代謝速度の増加をもたらしたと考えられる。
■ 結論として、得られたデータは、SCのバリア機能が相対的に劣っている健康なヒトにおいてさえ、露出した顔面の皮膚が他の領域の皮膚と比較して冬の乾燥や寒冷環境の影響下でより過敏になることを示唆する。
結局、何がわかった?
✅ 健康な成人女性39人の頬部・前腕屈曲部の経皮水分蒸散量・角質水分量に関して比較すると、TEWLは頬部と前腕屈曲部の両方で冬季に有意に低下することがわかった。
冬季の方が、皮膚バリア機能がさがることを示したといえましょう。
■ 冬季のほうが、アトピ—性皮膚炎が発症しやすい理由ではないかなあと思われます。
今日のまとめ!
✅ 前後比較研究の範疇ではあるものの、成人女性における皮膚バリア機能は、夏季よりも冬季のほうが低下するようだ。