一言でアトピー性皮膚炎といっても、いろんな経過をとることがわかっています。
■ アトピー性皮膚炎は多様な経過をとり得る疾患です。以前ご紹介した検討では、4種類のフェノタイプに分類されていました。
■ 今回ご紹介するのは、異なる地域で実施された二つの大規模コホート研究に関して同様の手法で検討すると、それぞれ6種類の同じようなフェノタイプに分類されたという結果です。
Paternoster L, et al. Identification of atopic dermatitis subgroups in children from 2 longitudinal birth cohorts. Journal of Allergy and Clinical Immunology 2017.[Epub ahead of print]
2つの出生コホート試験(英国の小児9894人、オランダの小児3652人)に関して、どのような経過をとっているかを分類して比較した。
背景
■ アトピー性皮膚炎(AD)は、多様な自然歴を有する一般的な疾患である。
■ 縦断的な出生コホート研究は、疾患の道筋に基づくサブグループを定義する機会を提供する。そして、異なる遺伝的および環境的病態機序を示す可能性がある。
目的
■ ADの異なるフェノタイプの存在を調査し、これらの知見が2つの独立したコホートにおいて再現可能であるかどうかを調査した。
方法
■ アトピー性皮膚炎は、英国の小児9894人(ALSPACコホート試験)、オランダの小児3652人(PIAMAコホート試験)の2つの出生コホート研究で検討された。
■ ADは、典型的なかゆみおよび/または屈曲部の湿疹に関する両親の報告によって定義された。
■ 出生から11〜16歳までのADのパターンを調査するために、潜在性クラス分析が使用された。
■ さらに、FLG遺伝子変異、23種類の確立されたAD遺伝的リスク変異、アトピー性疾患の合併症を含む、既知のAD危険因子との関連を調査した。
結果
■ ADのフェノタイプ6種類が同定され、2つのコホート試験に明らかな整合性があった。
論文から引用。AがALSPACコホート (n = 9894) 、Bが PIAMAコホート (n = 3652)で、同様の6種類のフェノタイプに分類された。
■ 最も一般的なクラスは、早期発症 - 早期寛解型ADであり、性別(男性)に関連していた。
■ さらに、2種類の症状が持続するフェノタイプが同定された(早期発症・持続型と早期発症・後期寛解型)。これらは、アトピー疾患の個々および両親の病歴だけでなく、ADの遺伝的リスクと最も強く関連していた。
■ さらに、FLG突然変異には関連していないものの、喘息と強く関連している、これまで知られていなかった中期発症型のADが同定された。
論文から引用。6種類のクラスが同定された。
結論
■ 湿疹の時間的経過に基づく6種類のクラスは、2つのコホートにおいて整合して同定された。
■ 異なるリスク因子プロファイルおよび多様な予後は、ADに対する層別化した医療アプローチの潜在的に重要であることを示している。
結局、何がわかった?
✅2つの独立した場所で実施されたコホート試験で、同様の6種類のフェノタイプに分類された。
アトピー性皮膚炎の予後が、早期に判明することが期待される。
■ アトピー性皮膚炎の中で、最も多いのは早期発症・早期寛解群であることが判明したと言えます。もともと、アトピー性皮膚炎は自然寛解は多い疾患でもあり、この結果は納得できるものでもあります。
■ しかし、一方で、早期発症で症状が続く場合は、他のアレルギー疾患の発症リスクが大きく上がることがわかっています。
■ しかも、早期発症しても感作されないのであれば、他のアレルギー疾患を発症しにくいことも判明しています。
■ さらに、成人に持ち越したアトピー性皮膚炎は、自然には寛解にくいことが報告されています。
■ 私は、自然寛解が多いからと言って治療が不要とは言えないと考えています。しかし、早期介入したほうが良いかどうかを、今回ご紹介したような研究から、さらに特定できるようになれば良いとも思っています。
■ ただ、残念ながら一般的な検査では特定はまだ十分できるとは言えない状況と言えましょう。さらに、こういう検討は、最初の段階で「予後良好群」に分類されても、経過で他のタイプに移ってしまうこともあり、「あなたの未来はこちらです」と確実に言えるものでもないと受け取るべき、天気予報のようなものと考えたほうがいいのかもしれません。
今日のまとめ!
✅アトピー性皮膚炎の自然経過は6種類に分けられるようだ。