母マウスにゾレアを使用すると仔マウスはアレルギーにならないかもしれない(第1回/全2回)

今後のアレルギー予防が変わってくる可能性を秘めた報告。

■ 予防と一言でいっても、一次予防、二次予防、三次予防とあります。

■ 三次予防は、すでに重症化したアレルギー疾患を治療するという、現在の治療そのものと言えます。

■ 二次予防は発症早期から介入して重症化を防ぐという予防。そして一次予防は発症前、すなわち新生児期から考えるような方法と言えましょう。

■ そしてさらに踏み込み、妊娠中から介入する方法で驚くべき報告がなされました(もちろん、現段階ではマウスに対する研究です)。

■ レター(短報)ですが、全文オープンアクセスですので、全体を翻訳してみます。すこし長いので、2回に分けます。

 

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Morita H, et al. IgE-class-specific immunosuppression in offspring by administration of anti-IgE to pregnant mice. J Allergy Clin Immunol 2018.[Epub ahead of print]

妊娠中の母マウスに抗IgE抗体を投与すると、仔マウスのIgE産生を抑制するか?

背景

■ アトピー性皮膚炎の存在は、食物アレルゲンに対する感作のリスクを高めることが知られている。

■ しかし、生後3ヵ月以前にアトピー性皮膚炎を発症する乳児が食物アレルギーを発症するリスクが最も高く、その後アトピー性皮膚炎が存在してもリスクが低下することは注目に値する。

■ 蓄積されたエビデンスがはまた、生後数ヶ月までに起こる環境要因が「アトピーマーチ」、すなわち、食物アレルゲンと同様に吸入アレルゲンへの感作により様々なアレルギー疾患の典型的な進行をもたらすかもしれないことを示唆する。

■ しかし、メモリー免疫細胞型の成熟のため、成人の患者における特異的IgE感作を戻すことは現実的ではなさそうである。

したがって、生後数ヶ月までのIgE感作の予防は、将来のアレルギー発症リスクを減らすための鍵となると考えられる。

■ 1980年代初頭、IgE産生を制御するサイトカインが発見される前は、抗体産生するIgEアイソタイプの特異的な阻害が集中的に研究されていた。

■ ある報告によると、同系のIgEで免疫化した新生児マウスでは抑制が達成され、抗IgE抗体の産生が反作用的に誘導される。

■ しかし、ヒトの新生児へのこのような侵襲的介入は現実的ではないため、その報告は忘れられているようである。

■ この文脈において、将来の臨床試験のために、抗体産生におけるIgEクラス特異的な阻害の実現可能性を再評価した。

 

方法

■ アレルギー感作の予防に関する概念を実証するために、抗IgE抗体を妊娠中のマウスに注射した。

■ ほとんどの抗IgE抗体はIgGクラスに属し、そして母親のIgG抗体は、胎盤組織に存在する新生児期のFc受容体の作用を通じて胎児に移動することができるからである。

■ 本研究ではラットIgG1抗マウスIgE抗体(クローンR35-92; BD Biosciences; 東京; 日本)を使用した。

仔マウスにおける抗原特異的IgE産生に関する母マウスへの抗IgE抗体の投与の効果は、採取された血液によって生後9週の成人期まで調査された。

■ 採血後9週目の成人期まで、子孫における抗原特異的IgE産生に対する抗IgEの母体投与の影響を調べた(この記事のMethodsセクションを参照 [Online Repository at www.jacionline.org] )。

■ 簡単に説明すると、妊娠12日目と18.5日目に妊娠した母マウスに抗マウスIgE抗体100μgまたは対照となるアイソタイプを静脈内注射した。

■ ミョウバンで乳化された卵白アルブミン(Ovalbumin; OVA)を、図1の例に示すように、4種類の異なるプロトコル(A~D)のそれぞれに基づき、対応する出生後の日数(postnatal day;PND)に仔マウスに腹腔内注射した。

論文より引用。研究プロトコール。

IgG抗体の血清中半減期は、マウスで6〜8日、ヒトで22〜23日であることを考えると、乳児期初期のアレルギーの発症を予防するための前臨床試験としての抗IgE療法の有効性を検討するのに十分な期間であると判断された

 

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結局、何がわかった?

 ✅ 妊娠中のマウスに対し抗IgE抗体を投与し、仔マウスに卵白アルブミン(卵の主要蛋白)を4種類の方法で投与した上で感作の程度を確認した。

 

母マウスに投与した抗IgE抗体は、仔マウスに有効だったでしょうか?

■ 明日以降にその結果、考察部分をご紹介いたします。

■ なお、この研究で使用されたのはそのままヒトに使用されるゾレアではありませんが、同様の効果があるものが使用されています。タイトルは分かりやすいように「ゾレア」としました

■ また、妊娠中のゾレア自体は、重症喘息の妊婦さんに使用されており、安全だろうと考えられています。

 

今日のまとめ!

 ✅ 抗IgE抗体を母マウスに投与すると、仔マウスのIgE産生に影響するかを検討した結果が報告された。

 

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