海外では、注射の際の痛みを減らすために、麻酔薬が含有されたクリームを使用するそうです。
■ EMLAクリーム(エムラクリーム)という、リドカインが含有された麻酔クリームがあり(保険は未適用)、静脈穿刺時(点滴確保など)や皮膚レーザー照射療法時の疼痛緩和に使用されています。
■ 一般には使用されませんが、海外の治験などでは使用されると聞き、実際に使ってみたことがあります(患者さんにではなく自分自身に)。たしかに痛みは軽減し、刺したときの痛みが鉛筆で突くくらいになるかなあと思いました。
■ それ以降で使用した経験はありませんが、EMLAクリームは、生後3ヶ月未満の乳児に対しては効果はそれほど期待できずリスクもあるかもという報告がありました。
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Shahid S, et al. Efficacy and Safety of EMLA Cream for Pain Control Due to Venipuncture in Infants: A Meta-analysis. Pediatrics 2019; 143(1): e20181173.
静脈穿刺を必要とする3か月未満の乳児におけるリドカイン含有クリームの有効性とリスクをランダム化比較試験10件(乳児907人)のメタアナリシスで確認した。
背景
■ 幼児の静脈穿刺中の痛みを軽減するために、リドカイン混合物(eutectic mixture of lidocaine; EMLA)クリームが使用されてきた。
目的
■ 非薬理学的介入と比較した疼痛の軽減、生理学的変数の変化、メトヘモグロビン血症の観点から、静脈穿刺を必要とする3か月未満の乳児におけるEMLAの有効性と安全性を決定する。
データソース
■ Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literature、Web of Science、灰色文献を、言語制限なしに、2017年8月まで検索した。
研究の選択
■ 研究者が、EMLAを非薬理学的介入と比較したランダム化比較試験を選択した。
データ抽出
■ 2名のレビュアーが独立して抄録のスクリーニングと全文レビューを行い、データを抽出してバイアスリスクを評価した。
結果
■ ランダム化比較試験10件(乳児907人)が含まれた。
■ EMLAを、ショ糖・母乳・プラセボと比較した場合、EMLAは疼痛の軽減にほとんどもしくは全く効果を示さなかった(標準化平均差 0.14; 95%信頼区間[CI]: - 0.17〜0.45、6試験、742人、moderate-quality evidence)。
■ プラセボと比較して、EMLAはメトヘモグロビン値の増加に対する小~中程度の影響が明らかになった(平均差 0.35; 95%CI 0.04から0.66; 2試験; 134人;low-quality evidence)。
■ EMLA群では、皮膚が白くなるリスクが高まった(相対リスク 2.63; 95%CI 1.58〜4.38; 2試験、123人; I2 = 84%; very low-quality evidence)。
限界
■ この結果は、月齢の高い乳児には適用されない可能性がある。
結論
■ EMLAは、プラセボと比較して静脈穿刺時の疼痛軽減に関するベネフィットは最小限であり、しょ糖や母乳と比較して利益を示さない。
■ さらに、ELMAはメトヘモグロビン値の上昇と皮膚が白くなる現象を引き起こした。
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結局、何がわかった?
✅ リドカインを含有したEMLAクリームは、ショ糖・母乳・プラセボと比較した場合、疼痛の軽減にほとんどもしくは全く効果がなかった(標準化平均差 0.14; 95%信頼区間[CI]: - 0.17〜0.45、6試験、742人、moderate-quality evidence)。
✅ リドカインを含有したEMLAクリームは、プラセボと比較してメトヘモグロビン値が増加する可能性が示された(平均差 0.35; 95%CI 0.04から0.66; 2試験; 134人;low-quality evidence)。
生後3ヶ月未満のリドカイン含有クリームを、注射時の疼痛軽減目的では使わないほうが良いかもしれない。
■ あくまで生後3ヶ月以内の乳児に対する検討ですので、それ以降の児に対しては別の話になります。
■ 麻酔薬を使用してはいけないという意味ではなく、「静脈穿刺時の痛み軽減のために」「生後3ヶ月未満児に」使用する意味は低そうだという結果と受け取りました。
今日のまとめ!
✅ 「生後3ヶ月未満の乳児に対する」リドカイン含有クリームを、「静脈穿刺時の痛み軽減のために」使用する意味は少ないようだ。