以下、論文紹介と解説です。

Just J, et al. Natural history of allergic sensitization in infants with early-onset atopic dermatitis: results from ORCA Study. Pediatr Allergy Immunol 2014; 25:668-73.

乳児期早期に発症したアトピー性皮膚炎乳児229人に関し、初回の感作パターンと6歳時の感作パターンを比較して6歳時の吸入アレルゲンへの感作リスク因子を検討した。

背景

■ 早期発症型アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)は,アレルゲンに対する複数の感作を発症するリスクがある特定のフェノタイプであるが、感作の経路についてはほとんど知られていない。

■ 本研究の目的は、ADの乳児の適切に選択されたコホートにおいて、このフェノタイプに対するアレルゲン感作の自然経過を説明したうえで吸入アレルゲン感作を発症するリスクを最も予測するマーカーを同定することだった。

 

方法

■ 進行中のAD乳児を登録し、6歳まで毎年、アトピーの生物学的マーカーを前向きに調査した。

■ アレルギー感作は、アレルゲン特異的IgE抗体陽性と定義され、複数の感作は2種類以上のアレルゲンに感作されていると定義された。

■ 血中の好酸球増加は好酸球数≧470好酸球/mm (3)、総IgE上昇は血清IgE値≧45kU/lと定義された。

 

結果

229人の乳児が含まれた。

■ 試験開始時に、血中好酸球上昇は60人(26.2%)に、総IgEの上昇は85人(37.1%)に認められた。

■ 試験開始時に上昇していた場合、好酸球増加とIgE抗体価上昇は追跡期間中、有意に高いままであった。

食物アレルゲンに対する感作は58%から34%に減少したが、吸入アレルゲンに対する感作は時間の経過とともに17%から67%に増加した。

食物アレルゲンに対し、試験開始時の複数の感作は、6歳時の吸入アレルゲンに対する感作を発症するリスクを最も予測する因子だった(OR 3.72 [1.68-8.30]; p<0.001)

 

結論

■ 早期発症型ADのフェノタイプでは、食物アレルゲンに対する複数の感作が、単一の感作よりも吸入アレルゲンに対する感作のリスクが高い。

 

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複数の食物抗原に感作されている場合には、早い段階で環境整備をすすめたほうがいいのかもしれない。

■ 交絡因子がありそうな結果ではあるものの、Th2(アレルギー体質)側に傾いた体質そのものがその後のアレルギー疾患を発症するリスクになりうるという考えもでてきており、参考になる結果と思われます。

■ 乳幼児期に複数の感作しているお子さんを診療することが多いのですが、その際、吸入抗原(ダニなど)が陰性のうちに環境整備をすすめるようにしています。

■ この方策が現実的に感作を防ぐことがどこまでできるかははっきりしません。しかし、「吸入抗原が陰性のうちに」アトピー性皮膚炎の治療や環境整備を積極的にすすめるということは重要ではないかと個人的には考えています

 

今日のまとめ!

 ✅乳幼児期に複数の食物アレルゲンに感作されている場合は、その後吸入抗原にも感作されやすいと想定して治療介入したほうがいいかもしれない。

 

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