以下、論文紹介と解説です。
Perälä M, et al. Young children with moderate-to-severe atopic dermatitis can be treated safely and effectively with either topical tacrolimus or mild corticosteroids. Acta Paediatrica 2020; 109:550-6.
中等症から重症の乳幼児アトピー性皮膚炎75人(1~3歳)に対し、タクロリムス外用薬vsステロイド外用薬治療で介入し、1年間の治療効果を比較した。
目的
■ アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis ; AD)の乳幼児に対するタクロリムス外用薬のエビデンスや安全性データを集め、ステロイド外用薬との使用を比較した。
方法
■ この検討は、タクロリムス外用薬vsステロイド外用薬治療を、3年間のランダム化オープンラベル比較試験でフォロー中の研究における、最初の1年間での75人(女児55%)の中間解析だった。
■ フィンランドのヘルシンキにある皮膚アレルギー病院に紹介された中等症から重症アトピー性皮膚炎に罹患している1歳~3歳の小児が登録された。
論文より引用。試験開始時の両群に差はない。
結果
■ Eczema Area and Severity Index(EASI)、Investigator's Global Assessment(IGA)、経皮水分蒸散量(TEWL)、湿疹の面積、血清総免疫グロブリンE(IgE)、血中好酸球数といった有効性を示唆するパラメーターは、試験中に両群で改善した。
論文より引用。両群とも改善している。
■ しかし、試験開始時に早期に感作の徴候が認められた患者(血清総IgEの上昇、好酸球数の上昇、プリックテスト陽性、吸入.食物アレルゲン特異的IgE陽性)においては、タクロリムス群における12ヵ月時点での湿疹部位のTEWLは統計的に有意に低く、湿疹面積が小さかった。
論文より引用。TEWLはタクロリムス群のほうが低い。
■ 治療中に重篤な副作用は見られなかった。
また、試験開始1週時に、タクロリムス群において3人の血中濃度が正常値を超えていた(それぞれ2.4、3.0、3.2μg/L)ものの、翌週にはすべて正常化(1.5μg/L未満)していました。
1人目、2人目、3人目の患者の1週目のタクロリムス軟膏使用量は、それぞれ73g(0.03%)、2g(0.03%)+4g(0.1%)、42g(0.03%)でした。
また、タクロリムス血中濃度が2.4μg/Lと3.0μg/Lの児は、アトピー性皮膚炎に加えて軽度の尋常性魚鱗癬と診断され、軟膏の吸収に影響を与えた可能性があるとしていました。
結論
■ ADがあり早期感作の徴候を有する小児は、ステロイド外用薬治療よりもタクロリムスを早期に開始する治療の方が有益であるように思われた。
■ 乳幼児は、中等症から重症ADを治療する場合、より強く安全な軟膏の選択肢を必要とする。
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これをもって2歳未満でのタクロリムス外用薬を使用できるとはいえませんが、、、
■ タクロリムス外用薬を2歳未満に使用するには、まだまだハードルはある(治験を要する)と思いますが、少なくとも2歳以降では積極的に使用してもよい理由となるかもしれません。
■ ただし、日本では1日の使用量に制限がかけられており(制限が必要ないかもしれないという議論は続いています)、全身に塗ることは困難ですので、減量の手段の一つとして使用される場合が多いでしょう。
今日のまとめ!
✅ タクロリムス外用薬は、低年齢における中等症以上のアトピー性皮膚炎に対する治療選択肢になるかもしれない。ただし、日本では2歳未満には使用できないことに留意を要する。