以下、論文紹介と解説です。

Verity R, et al. Estimates of the severity of coronavirus disease 2019: a model-based analysis. Lancet Infectious Diseases. 2020

COVID-19により死亡した患者、中国本土以外の症例情報を収集し、全体的な死亡率を年齢ごとに推計した。

  
背景

■ データが急速に更新されてくるにつれ、新型コロナウイルス2019(COVID-19)の症例の推定死亡率の範囲は、程度が大幅に異なっている。

■ そこで、打ち切り・確認バイアスを考慮した、確固とした推定値を提供することを目的とし、検討した。

 

方法

■ 中国本土の湖北省でCOVID-19により死亡した患者(2020年2月8日までに国と地方の衛生委員会に報告)、中国本土以外の症例(2020年2月25日までに、香港とマカオに加え、37カ国の政府または保健省のウェブサイトおよびメディアレポートから)について個々の症例データを収集した。

■ これらの個々の症例データを用いて、症状発現から転帰までの期間(死亡退院)を推定した。

■ 次に、人口統計および年齢および場所に基づく確認が過少である場合を調整し、中国で観察された累積死亡数と症例の分布を関連づけることにより、症例の死亡率の年齢別に層別化した推定値を得た。

■ また、中国本土以外で同定された1334症例の個々のデータから症例死亡率を推定した。

■ 中国から帰国した国際的な居住者におけるPCR確認症例の有病率に関するデータを用いて、感染致死率の年齢別の層別化された推定値を得た。

■ さらに、中国の3665症例のサブセットにおける年齢別に層別化した重症度に関するデータを用い、入院を必要とする可能性のある感染者の率を推定した。

 

結果

■ 中国本土での死亡例24例と、国外での回復例165例のデータを用いて、症状発現から死亡までの平均期間は17.8日(95%信頼区間[CrI]16.9~19.2日)、退院までの平均期間は24.7日(22.9~28.1日)と推定された

■ 中国本土(70117例)の、検査室で確認され臨床的に診断された全症例において、粗死亡率(打ち切りで調整)は3.67%(95% CrI 3.56~3.80)と推定された。

■ しかし、人口統計と確認の過少によりさらに調整すると、中国における症例の致死率の推定値は1.38%(1.23~1.53)であり、これは高齢者層ではかなり高く(60歳未満0.32%[0.27~0.38] vs 60歳以上6.4%[5.7~7.2%])、80歳以上では最大13.4%(11.2~15.9%)だった。

■ 年齢で層別化した国際的な症例からの死亡率の推定は、中国からの推定と一致した(60歳未満[360例]は1.4%[0.4~3.5%]、60歳以上[151人]は4.5%[1.8~11.1%])

■ 中国の全感染者の推定致死率は0.66%(0.39~1.33%)で、年齢が上がるに従って上昇した。

■ 同様に、入院する可能性のある率の推定値は、80歳以上では、最大18.4%(11.0–7.6)まで年齢に従って上昇した。

(A) 武漢およびその他の地域における症例の年齢分布。
(B) 人口統計・不十分な確認により調整した、年齢ごとの層別化した死亡率の推定値。
 ボックスは中央値とIQR、縦線は1.5×IQR、個々のポイントはこの範囲外の推計値。
(C) 武漢以外の地域における50歳~59歳の年齢層と比較し、中国の武漢以外の地域・武漢で確認された症例の推定

 

年齢ごとの『入院の推定率』。

解釈

■ これらの初期の推定値は、COVID-19の致死率の指標を示しており、死亡リスクにおける強い年齢勾配を示す。

 

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新興感染症に対し、目の前の患者さんのリスクを得るには、論文からまず得るしかない。

■ この記事は、『私自身がデータとして実感をもつために読んだ論文の共有』のために提示しています(小児であれば低リスクとか、亡くなることが少ないという意味ではありません。現実にゼロではありません。)。

■ なお、Lancet Infectious Diseasesに、COVID-19とSARS、季節性インフルエンザの比較の表がありました(Ruan S. Likelihood of survival of coronavirus disease 2019. The Lancet Infectious Diseases.)。

■ これは、我々医療者の比較対象としてわかりやすい、もしくは実感を持って参考にできる表と思い共有のために提示します。

 

SARS、新型コロナウイルス(COVID19)、季節性インフルエンザの死亡率の比較(年齢別)。

※Ruan S. Likelihood of survival of coronavirus disease 2019. The Lancet Infectious Diseases.より引用

 

 

 

今日のまとめ!

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