以下、論文紹介と解説です。

Chu DK, et al. Physical distancing, face masks, and eye protection to prevent person-to-person transmission of SARS-CoV-2 and COVID-19: a systematic review and meta-analysis. The Lancet 2020.

新型コロナウイルス(SARS-Cov2)、SARS、MERSの感染防御に関して、マスク・距離・アイガードの効果を検討した44 件(25697人)のメタアナリシスを実施した。

背景

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2; SARS-CoV-2)は,COVID-19を引き起こし,密な接触を介して人から人へと感染する。

■ そこで、医療現場と非医療現場(コミュニティなど)におけるウイルス感染に及ぼす物理的距離、フェイスマスク、アイガードの影響を調査した。

 

方法

■ システマティックレビューとメタ解析を行い、人から人へのウイルス感染を回避するための最適な距離を調査し、ウイルス感染を防止するためのフェイスマスクやアイガードの使用を評価した。

■ SARS-CoV-2 と重症急性呼吸器症候群の原因となるβコロナウイルス、中東呼吸器症候群に関するデータを、WHO の標準的なデータベースと 21 のCOVID-19のデータベースから取得した。

■ データベース開始から2020年5月3日までに、言語による制限をせずに、比較研究、忍容性、実現可能性、資源利用性、公平性の文脈的要因を求めて検索した。

■ 記録をスクリーニングのうえでデータを抽出し、重複した場合のバイアスリスクを評価した。

■ 我々は、頻度論的メタアナリシスとベイズメタアナリシス、ランダム効果メタ回帰を行った。

■ コクラン法およびGRADEアプローチに従ってエビデンスの確実性を評価した。

■ 本研究はPROSPERO、CRD42020177047に登録されている。

 

所見

■ この検索では、16 カ国・ 6 大陸にわたる 観察研究172 件が特定されたが、ランダム化比較試験は実施されていなかった。

関連する比較研究44 件(25 697人)が医療現場と非医療現場の両方で実施されていた

ウイルスの感染は、物理的距離が1m以上の場合は、1m未満の場合と比較して低かった(10736人、プールされた調整オッズ比[adjusted odds ratio; aOR] 0.18; 95%CI 0.09~0.38;リスク差[risk difference; RD] -10.2%; 95%CI -11.5~-7.5;moderate certainty)

■ そしてその保護効果は距離が長くなるほど大きくなった(相対リスクの変化[RR] 2.02/ m;相互作用 0.041;moderate certainty)。

論文から引用。距離が離れるほど、感染リスクが低くなる。

フェイスマスクの使用は感染リスクの有意な減少につながる可能性があり(2647人;aOR 0.15; 95%CI 0.07~0.34; RD -14.3%; -15.9~-10.7; low certainty)、N95または類似のマスクや、使い捨てのサージカルマスクまたは類似品(例えば、再利用可能な12~16層の綿製マスク;相互作用 0.090;事後確率>95%; low certainty)と強く関連していた。

論文から引用。SARS、MERS、COVID-19における、マスクの感染防御効果。

■ アイガードもまた、感染の減少と関連していた(3713人;aOR 0.22; 95%CI 0.12~0.39、RD -10.6%; 95%CI -12.5~-7.7;low certainty)。

■ 未調整の研究、サブグループ解析、感度解析でも同様の結果だった。

 

解釈

■ このシステマティックレビューとメタアナリシスによる知見は、1m以上の物理的距離を支持し、政策に情報を提供するためのモデルと接触追跡のための定量的な推定値を提供している。

■ 公共の場や医療現場でのフェイスマスク、その他のマスク、アイガードを最適に使用することは、これらの知見と文脈的な要因に基づき情報提供されるべきである。

■ これらの介入に関するエビデンスをより良く伝えるためには、確実なランダム化比較試験が必要であるが、現在利用可能な最善のエビデンスを体系的に評価することで、暫定的なガイダンスが得られる可能性がある。

 

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『ユニバーサルな(全員の)』マスクの使用が、COVID-19の感染拡大を低下させる可能性があることを示している。

■ 5月27日には、Scienceにもマスクに対するレビューが掲載されています。

Scienceから引用。
マスクがエアロゾル感染のリスクを低下させることを示している。

■ ただし、これらのマスクの使用に関しては、その流行度に応じて意味合いが変わるだろうと考えられます。

■ 今回は、COVID-19の流行があり、さらに適切な予防接種がない状況であるからこそ、『ユニバーサルな(基本的に全員が)』マスクをする必要性があるという推奨になったのだといえましょう。

■ 先行して、4月に『エアロゾルが発生しないようなリスクが低い場合は』、一般的なマスクがN95マスクと同じくらい有効かもしれないというメタアナリシスが発表されていました(Influenza Other Respir Viruses 2020.

■ そして、このLancetの報告につながったといえましょう。マスクは新型コロナウイルスの感染リスクを有意に下げるのではないかという結果とまとめられます。

■ このような背景から、WHOからの流行地域でのマスク着用の推奨がでてきたのではないかと、私は推察しています。

 

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今日のまとめ!

 ✅『ユニバーサルな』マスクを使用すると、COVID-19の感染拡大を低下させる可能性がある。

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