以下、論文紹介と解説です。

Isoda K, et al. Treatment of cloth with a fabric softener ameliorates skin dryness. The Journal of dermatology 2011; 38:685-92.

明らかな乾燥肌の男性ボランティア40人を、柔軟剤使用群、不使用群にランダム化し、0日目、7日目、14日目、28日目に様々な指標で改善度を確認した。

背景

■ 乾燥肌とは、アトピー性皮膚炎や老人性湿疹など、皮膚のバリア機能が低下した状態のことである。

繊維柔軟剤(Fabric softening chemicals; FSC)は、繊維の表面を滑らかにし、皮膚との摩擦を減少させる。

■ しかし柔軟剤における皮膚乾燥に対する科学的評価は非常に限られている。

■ そこで、乾燥肌の被験者を対象に、FSCにより処理したTシャツの有効性と安全性を評価した。

 

方法・対象

■ この研究は、明らかな乾燥肌の男性ボランティア40人を対象とした、ランダム化二重盲検対照試験である。

被験者をランダムに2群に分け、20人に28枚のFSCにより処理されたTシャツを4週間着用してもらい、別の20人には無処理のTシャツを着用してもらった。

管理人注
柔軟剤は、『ハミング濃縮タイプ』を使用し、Tシャツは綿製でユニクロで購入したそうです。
そして、市販の一般的な洗濯機用粉末洗剤と家庭用洗濯機(パナソニック製)を使用し、25℃の水道水で通常のサイクルで5回洗濯したそうです。

■ 試験の効果は、0日目、7日目、14日目、28日目の視覚的評価、自覚症状、角層水分量( stratum corneum water content ;SCWC)、経皮水分蒸散量( transepidermal water loss; TEWL)、ダーマスコピーによる皮膚表面分析により評価した。

 

結果

SCWCの有意な改善が、FSCで処理したTシャツを着用した肩(7~28日目)と側腹部(14日目)の皮膚で観察されたが、処理していないTシャツでは観察されなかった

論文から引用。柔軟剤使用群(●)と不使用群(○)の比較。

■ SCWCが低い群と高い群における検討では、SCWCが低い群では有意な改善が認められたが、高い群では認められなかった。

肩の視覚的な等級付けでは、FSCで処理したTシャツ群において有意に改善していた。

■ TEWL、ダーマスコピー検査、自覚症状については両群とも有意な改善は認められなかった。

■ この研究では、あきらかな副作用は認められなかった。

 

結論

■ 衣類の洗濯時に柔軟剤を加えることは、乾燥肌に対する強力な予防手段となる。

 

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柔軟剤は、衣服で擦れやすい乾燥肌に対して、むしろ改善に働くかもしれない。

■ 研究が花王株式会社によって支援されているというバイアスがあるものの、『柔軟剤がいけない』とまで考えなくてもよいとまとめられます。

■ もちろん個人差はあるにせよ、同様の結果が別の研究でも示されており(International Journal of Cosmetic Science 2011; 33:566-71.)、ある程度再現性もあるといえそうです。

■ とくに、『衣服で擦れやすい』肩の悪化が減るというのは、『肌触りがよい衣服がよい』という理由になると思われます。

 

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今日のまとめ!

 ✅ 柔軟剤を衣服に使用することで、むしろ乾燥肌は改善するかもしれない。

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